Time goes by ３

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懐かしさと愛おしさと。

それから、

俺らのこの先の時間は、
決して繋がらへんことへの、

苛立ちと。


ぐちゃぐちゃやのに。


「とも、とも・・・」


俺を呼ぶ、Aの甘えた声に。


それ以上の優しい気持ちが、

自分の中に溢れてること、


思い知らされて。


愕然となる。


不意に離れて立ち上がった俺を、
Aは寂しそうな目をして見つめてる。


「そん気なくなった。
俺、女んとこ行くわ。
鍵、ポストな。
間違っても持って帰んなや」


それだけ吐き捨てるように言うて、
壁のMA-1を引っ掴んで、外に出る。


マンションの非常階段駆け降りて、
ガラス扉くぐったはええけど。


吹き付ける冷たい突風に、身体が縮こまる。


素足やし、財布も、携帯すら持ってへん。


「俺、一体、何やってんねんて」


ため息も白くなるねんな。


「ほんま、しょうもな・・・」


どうしようもない。


こんな俺。

眩しいぐらい輝いてる、
今のAに相応しいわけないやろ。


大通りまで出て、
タクシーに手を挙げた。

乗り込んですぐ、
中間社長が住んでる高級マンションの名前告げる。


今の俺には、他に行くあてなんかない。







マンションの合鍵で中に入る。

奥の寝室で寝てはる思たのに。


社長は、
リビングの巨大なスクリーンに、
古い映画を再生して見てはった。


「すいません。こんな遅く。
いうか、もうすぐ朝っすね」


「遠慮なんかせんでええよ。
ここはもうトモのうちやろ？」


ちょうど１年ぐらい前。

夢破れて、
人を信じられへんなってもうた、

ぼろ雑巾みたいやった俺を拾ってくれたんが、
中間社長。


３６歳、俺とおんなじ兵庫出身。


やり手でさ、
表向きの顔は実業家やけど、
裏では、闇の世界と繋がりが深いって噂。

うちのホストクラブの影の経営者や。


めちゃくちゃ頼れるし、
優しくてええ人やねん。


俺のこと、
大手の芸能事務所に紹介してくれるって言う。

ダンサー兼歌手として売り出してくれるらしい。


グラフィックデザイナーになる夢、
諦めたわけちゃうけど。

デザイン業界は、
優香子の父親の手が回ってて、
どこの会社も雇ってくれへんねん。


それなら、自分でやるしかないって。

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