Time goes by ３

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あん時、めっちゃ嬉しかったな・・・


「物は大事に使う主義やねん。
そんだけで他意はないからな」


苦し紛れの言い訳みたいやろ、これ。


こっそり買った、Aのコンテスト受賞作品。

あの絵は、寝室にあるし、大丈夫やろ。


「俺、とりあえず着替えてくるわ」


「う、うん」


着替えってワードにあたふたするとこ、
変わってへん。

可愛え。


さっきから、自制心がぐらぐらしてる。


冷たくせな。

朝一に追い返すんや。


頭では警笛が鳴り続けてんのに、

心が追いついていかへん。


中の絵を見られへんように、
さっと寝室に入る。


「ふう・・・」


また深いため息が漏れた。


まさか、Aが、こんな大胆な行動取るなんか、
想像もつかへんやろ。

俺の想定を遥かに超えて来た。


シゲとやり直すもんやとばっかり思てたのに。


Aんこと、みくびってたな。


俺が、唯一惚れた女の子やもんな。


そら、芯強いに決まってる。


ほんまは嬉しいてかなわん。

その感情に流されてまいそうで、怖い。


部屋着のスウェットに着替えてたら、

ドアの向こうから、


「ひゃあああっ！！！」


夜中やってのに、すんごい悲鳴が、
聞こえてきた。


「ちょ、何、叫んでんねん」


つい、俺まで声でかなってもうたやん。

静かにせな思た途端に。


Aが、扉の中に飛び込んで来てん。


どないしよう。

絵は、目の前の壁に飾ってんのに。


心配したけど、


「神山くんっ。ヤ、ヤ、ヤモリがあっ！！！」


Aは冷静さを失ってて、
壁になんて、注意がいかへんみたいや。


A、爬虫類めっちゃ苦手やねん。

いや、別に俺も得意ではないけどな。


「ヤモリぐらいで大騒ぎすんなや」


ヤモリがおんのは、
扉の向こうのリビングやのに、
俺の背中に隠れてるねん。

めっちゃ可愛ええ。


「大丈夫やって。
ヤモリごときにビビり過ぎやろ」


素っ気なくってどうやんの？

男の友達と話す感じで。


それをイメージしてるけど、
時々、上手くいかへんねんな。


「だって。
ヤモリだよ？あのヤモリ！」


「家守ってくれてるねんやん」

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