【w/r/w/r/d】ツァラトゥストラはかく語れり (ページ1)

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美しく気品ある館には、端正な顔立ちの兄妹がいました。

優しく優れた頭脳を持つ兄のオスマン。

純真で愛くるしい妹のA。

性格の良さもあいまって、二人は周囲からも信頼されていました。
だが、二人がどう暮らしているのか、家庭環境はどうなっているのか、詳しいことを知っている者は一人もいないのです。

「王子は姫に接吻をし、呪いは解かれました。そうして二人は末永く幸せに暮らしました…。お兄様！私、お姫様になりたいわ！お姫様になって王子様と末永く一緒に暮らすの！」

「そっか、じゃあ王子様を探さんとな」

オスマンは王子様探しの旅に出かけました。

旅先では様々な物語に出会いました。

『精神を喪った総統の話』

『一人を想った教授の話』

『観念に惑わされた無能の話』

『恋に感傷した密偵の話』

生憎、どの話も無残なものばかり。

どの話にもオスマンの探す王子様はいませんでした。

「どれも残酷な話ばかり。どこにもAに相応しい王子はいないんやな…」

そうオスマンが呟いていると、一人の小人が話しかけてきました。