人には愛されたいけど鬼には愛されたくなかった。/陸【鬼滅の刃】

２６２話＊＊雑愛は帰れっつってんだろ ページ42

＊＊No side＊＊


Aが自分のやるべきことを模索し、怪我人の手当てに専念するその一方で、村田達一般隊士も怪我人の手入れに勤めていた。



「いたぞーッ！また怪我人！って、あれ？手当てされてる！なんで？！」
「先程から手当てされている隊士をよく見かけるな。医療の技術のある隊士が近くにいるのか？」



そう冷静に分析するのは人間のふりをした愈史郎である。
素知らぬ顔で隊服を着用し紛れ込んでいる彼は、珠世から隊員の救護及び援護を言いつけられていた。

珠世が鬼にした唯一無二の存在故に、村田を含め行動を共にしていた隊士達は妙な気配だなぁと思いつつもまさか鬼とは思っていない。




さて、閑話休題、愈史郎のその言葉に先程保護された隊士のひとりが小さく口を開いた。




「蛇の……」
「はぁぁ？！その手当て蛇柱がやったのか？！？！嘘すぎだろ！！！」
「違っ、てめェ蛇柱様侮辱すんなよ！じゃなくて、蛇みたいな目の、一瞬蛇鬼かと思うほど目つきの悪い女の子に助けられたんだよ！」


ソイツはただの蛇鬼なのでは？？
手当てしたのも油断させてから喰うつもりだったからじゃね？


その場にいた多くの隊士がそう考える中、村田をはじめとした数人の隊士が「あっ」と顔を見合わせた。




「それ、Aじゃね……？」
「は、誰だよA」
「AA！蝶屋敷の看護師だよ！蛇の鬼に間違えられるほど目つき悪い女の子なんてアイツしかいないって！」
「それ本人に絶対言うなよ？！アイツ目つきのことでなんか言われるとガキみたいに手足ばたつかせてクソ大声で泣きわめくから！！」




もう散々である。
もしこれを炭治郎、善逸、しのぶ、実弥あたりが聞いていたら全員説教(肉体言語)を免れることは出来なかっただろう。

Aは怒っても全然怖くないだの、その代わり蟲柱とカナヲはめちゃ怖いだの、蝶屋敷の話題で盛り上がる隊士達を尻目に、話題を振った張本人である愈史郎はその名前を珠世に教えられていたことを思い出していた。




「(ん？じゃああの鎹烏と一緒に行動しているのが噂のAA、もとい零藤か……醜女、というわけではないが、絶世の美女か、と言われれば違う……特筆できるところと言えば先程から散々言われている目つきの悪さぐらいだな)」



愈史郎は星1の辛口レビューより辛辣にAの顔を評価すると、静かに溜め息を吐いた。





「(この平凡な娘が■■……珠世様は悲しむだろうか、それとも憐れむだろうか)」

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