人には愛されたいけど鬼には愛されたくなかった。/陸【鬼滅の刃】

２６１話＊再演 ページ41

胡蝶しのぶ死亡、そう言ったのかこの烏は。




『嘘』
「嘘デハナイ！鎹烏ハ嘘ハ吐カナイ」



嘘、だってしのぶさんは強いのに。
鬼殺隊から遣われて私を助けてくれたのも、私に医療の知識や鍛錬をつけてくれたのもあの人なのに。




嗚呼私、結局しのぶさんのことはわからないことだらけだったな。


復讐のために鬼狩りをしてるとか、お姉さんが鬼と仲良くしたがってたこととか、そのあたりのことは全て漫画で得た知識だ。

結局何もあの人の口から聞けなかった。四つぐらいしか歳の変わらない彼女が、何か重い荷物を持っているのをわかっていながら何も出来なかった！





……そんな私にさえ、素性も知れない私にさえ、彼女は家族のように、姉のように接してくれた。



目の前が涙でぼやける。口から情けない嗚咽が漏れる。ここで大声で泣き叫ぶことが出来たらどれだけ楽だろう。


そんなことしたら、しのぶさん絶対怒るだろうなぁ。


「AA、前ニ進メ」
『うっさい、わかってるよ』
「上弦ノ弐ハ此処カラ四時ノ方向ニアル！被害拡大ノ恐レハナイトハイエオ前ハ近ヅクナヨ！」
『わかってるってば！！』




救急箱を握る手に痛いぐらいの力を込める。
そうでもしないと、どうなってしまうかわからなかったから。





私はわりと、少年漫画の極悪非道な悪役でも悲しい過去とかあるキャラは割と許してしまう、というか推してしまうタイプだ。




けど、兄ちゃんと、私の世界で一番大切な人と同じ顔をした鬼の始祖。


アイツだけは絶対に絶対に絶対に、何度生まれ変わっても許すことも好きになることもないだろう。







『……ッ』





殺すとか死.ねとか、そういう言葉は好きじゃない。


出来もしないくせにそう言うこと言っちゃうのってイタいと思うし、真っ当な両親に真っ当に育てられた身としては、そういう言葉は命を軽んじているようにしか感じない。

何より「人の命は尊いものだから、そういった言葉は遣っちゃいけません」という母さんの言葉を覚えているから。



けど、けどね母さん。今だけは、貴女の娘が汚い言葉を遣うのを許してほしいんだ。






『ぜったい、絶対嬲.り殺してやる……！！』





何を犠牲にしようとも絶対、絶対絶対絶対絶対にアイツを追い詰めなきゃ。殺さなきゃ。この千年間この世界の人々が味わってきた苦しみを倍にして返さなきゃ。

何があっても、何をなくしてもこの思いだけは消すものか。
わたしは今度こそやり遂げるんだ……！！

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