254話*私の最愛 ページ33
『は……?え、兄、ちゃん……?』
「嗚呼、そうだとも」
炭治郎のような赤い瞳
どこかで見たアニメキャラのように癖のある黒髪
日本人離れした整った容姿
私と同じ鋭い目つき
突如眼前に現れたその人は、紛れもない私の兄だった。
私が会いたくて会いたくて、幻覚を見るほど執着したその人で間違いなかった。
でも、どうしてここに?
そう思ったのが顔に出ていたのだろうか。
私より随分身長の高い兄は私の頭を撫でながら、口を開いた。
「お前が困っているような気がしたからな。大丈夫、怖いものは全て私が排除しよう」
私の髪に触れるその手は相変わらず不健康なまでに白く蛇のように冷たい、以前と全く変わらない兄のものだった。
そう、以前と全く変わらないはず。それなのに……
「?どうした」
何か、何かがおかしい。違和感がある。
でもその違和感を探そうとすればするほど、薬を打ったみたいに頭が痛くなる。
「ここは危ない。私の手を取って───」
「A、下がれーーーッッッ!!!!」
兄がその言葉を言い終わるか言い終わらないか、といったタイミングだった。
瓦礫を掻き分けてきた炭治郎が兄を斬りつけたのは。
『待っ……やめてよ!私の家族を傷つけないでよ!!』
「目を覚ませ、A!その人は、いや、そいつは、鬼舞辻無惨だ!!」
『は、』
きぶつじ、むざん?
それは炭治郎の家族を殺した鬼の始祖、諸悪の根源の名で間違えないだろう。そこまでは理解できる。
けど……は?
私の目の前にいるこの人が、鬼?
『そ、そんなわけ……』
「Aさん、奴の傷を見てください!貴女のお兄さんはこんなに早く傷が治りますか?」
女性───恐らく珠世さん───に示された方向を見れば、兄、否、先程まで兄だと認識していた誰かさんの体には傷一つない。
嗚呼、こいつは人間じゃない……!
「恐らく認識齟齬の術をAさんに掛けています!そいつは貴方のお兄さんじゃない!!一刻も早くそいつから離れて───ゔっ?!」
「お前はつくづく余計なことをするな、珠世」
少し遅れて現れた柱達に怯む様子もなく、珠世さんの頭を掴みながらソイツは私に向かって微笑みかける。
術というものは強力だが、自覚すると意外と簡単に解けるものらしい。
なんで私はさっきまでコイツと兄ちゃんを間違えていたんだろう。
兄ちゃんが私に向かってそんな優しい言葉をかけるはずがないのに。そんな笑みを私に向けるはずがないのに!
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天弥(プロフ) - 紅鮭@さぶさん» 有難う御座います!! (2022年6月7日 23時) (レス) id: 6363332534 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@さぶ(プロフ) - 天弥さん» お返事遅れちゃってごめんなさい!もちろんですよ〜!!お友達申請しておきますね٩(ˊᗜˋ*)و (2022年6月7日 22時) (レス) @page6 id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
天弥(プロフ) - 今231話までを見て思ったことを言います。………主様、知り合いになって頂けませんか?((( (2022年6月6日 11時) (レス) @page6 id: 6363332534 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱(プロフ) - ネコマタさんのちょびひげさん» 人には塩対応されるけど鬼には愛され(笑)る系女子、それが零藤ですので!これからも霹靂一閃並のスピードで進んで行きますのでよろしくです(´∀`*) (2021年7月25日 6時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
ネコマタさんのちょびひげ(プロフ) - 数年ぶりにあった初孫…じわじわきました(笑)黒死牟さんがお祖父ちゃんなら、上弦の三と二は親戚の叔父さんとか従兄弟とかですかねぇ。展開にワクワクしてきました。続きが気になりますっ!…というか不死川さんって…… (2021年7月24日 13時) (レス) id: d3a88c7d37 (このIDを非表示/違反報告)
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