人には愛されたいけど鬼には愛されたくなかった。/陸【鬼滅の刃】

幕間＊所詮はこども ページ21

筆休め。またの名を作者の息抜き。



＊＊＊＊＊＊


「Aちゃんの家族はどんな人だったの？」



それは宇髄邸にいた時のこと。
そう、唐突に須磨さんが聞いてきたんだ。



『す、須磨さんが聞いて楽しい話は出来ないと思うんスけど』
「Aちゃんったら、私達のことはちゃん付けで呼んでって言ったでしょ！」



論点そこか。

何歳かは知らないけど私よりもだいぶ歳上な人─一度年齢を聞こうとした時、雛鶴さんに見たことないぐらい怖い顔されたから二度と歳の話はしないと決めている。二度と。──をちゃん付けで呼ぶのはやや抵抗があるんだけど……

真菰に「相手を立てると思って」と言われたのを思い出し、大人しく従うことにした。



『じゃあもう一度と言いますけど須磨ちゃん、』
「敬語！外して！」
『じゃあもう一回言うからよく聞いてね須磨ちゃん！須磨ちゃんが聞いて楽しい話、私できないから！！』


め、めちゃくちゃ満足げな顔をしていらっしゃる……
流石あの自由奔放の概念みたいな宇髄さんを振り回すと名高いくノ一。レベルが違ぇ。(褒めてる)



「楽しい話なんかしなくていいの！Aちゃんが話したいように、作業的でも良いからAちゃんの家族の話が聞きたいの！」



なんでそこまでして聞きたがるんだろう。最早一種の執念を感じる。
もしかして私の家族の話を聞き出すたびになんかポイントでももらえるの……？


それは兎も角私には暗い過去もなければ「実は兄と弟以外家族いません！孤児院で育ちました！」みたいな鬱展開も用意されてないので。

特に隠したい過去があるわけでも、嫌がる理由もないので、須磨ちゃんにあくびされる覚悟をしつつ、口を開いた。


『私の家族は……』






＊＊＊





「弟くんはほんっとにAちゃんとお兄さんが大好きなんですねぇ！ね、まきをさん！」
「叩くな須磨！にしてもAもけっこうやるなぁ、兄とそんなに大喧嘩するとか」




結果、だいぶぶっ通しで話し続けたけど須磨ちゃんは私の話にずっと目をキラキラさせていて、私の話に飽くことなく付き合ってくれた。

途中でまきをさんと雛鶴さん巻き込んだときはちょっとびっくりしたけど。




「Aちゃんがあんなに真っ直ぐなのはそんな親御さんに育てられたっていうのもきっと大きいのよね。うん、本当に良い家族ね」
『えへへ、そんなこと……』



ありませんよ、と言いかけ口を閉ざした。

だってあの人達は本当に、本当に良い家族だったから。

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