＊ ページ47
.
.
.
.
.
長い夢だった
18年という途方もなく長い月日を過ごした
けれどそれはあの世界での話
元の世界に戻ってきた私の体は、ユニーク魔法を使ったあの日から何も変わっていなかった
長い夢を見ても、覚めればそれほど時間が経っていない感覚と同じ
『ごフッ…！！』
口から苦悶の声と共に赤黒い血が飛び出した
完全無欠のユニーク魔法など存在しない
強い効力のものほどその代償も大きい
これが最後のチャンスだった
最後の渡航だった
だから禁忌まで犯したというのに
『私、何がしたかったんだろう…』
夢を一つ一つ叶えていったはずなのに
最後は好きな人と結ばれたはずなのに
幸せな自分の姿を、確かに見たはずなのに
何も満たされなかった
それもそうだ
ボネセットは、結局は同じ名前をした他人だったのだから
何一つ、この私は手に入れてないのだから
『……誰か…誰か居ないのか』
脳裏に蘇るは、花と花に託された言葉を受け取って笑う私
『…わたしに、花を贈る者は…』
…なにも、
なにも、ないじゃないか
私の手には何一つ残っていないじゃないか
命を懸けてまで世界を渡ったのに
私の場合、持ち越せるのは記憶のみ
地位も名誉も綺麗なドレスも
あの世界の私が贈られたような愛も花もない
いや、そんなもの元から私には…
『ぁ…』
ふと、小さな窓から濃紺の空を見上げた
『そうだ、今日は…』
私は別世界に飛び立った日のことを思い出す
一年に一度だけの特別な日
そんなめでたい日にかこつけて最後の渡航を決断したんだったと思い出した
『私の、誕生日…』
11月12日
冬の足音が近付く霜降る月
遠くの空で、小さく輝く星が地上から立ち上っていた
『わたしの為の
這う這うの体で枝のような腕を伸ばす
けれど、どれほど身を乗り出してもあの輝きに届くことは無い
『ぁ、あああぁあッ…』
慟哭が辺境の馬小屋に轟く
残り僅かだった命が尽きるその時まで、少女は泣き叫び続けた
それから
亡き王女は独り土に還る
死んだその後も、誰かが彼女に花を捧ぐことは一度たりともなかったという
亡き王女の為のアスター
花も、星も
それを手にしたのは別の自分
彼女の人生は無意味に幕を閉じたとさ
めでたし、めでたし
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 530人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くらげ - 待って、、、ロスカゲートじゃない、、、、、すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！！！！！！！！！！！！ (12月3日 10時) (
レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - "深淵の君"ってえ！？王子様がくるその日までのロスカゲートちゃん！！？？いろんな世界線ある！？やべぇ！！！これからも応援してます！！！！ (12月3日 10時) (レス) @page31 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
あ - 天才か 夜中に見て感傷に浸ってる (2023年1月10日 2時) (レス) @page50 id: af6608e558 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - ぷりんせす わんこ見たいです🥺 パスワード教えて欲しいです…作者様の作品が全部良すぎてお気に入りです。 (2022年12月19日 19時) (レス) id: ace6ee2d95 (このIDを非表示/違反報告)
みみ - ぷりんせすわんこ見たいです...🥺パスワード教えてほしいです...作者様の作品全部が神すぎて..... (2022年12月4日 15時) (レス) @page50 id: b8f7239a75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年10月12日 15時
