【ツイステ】亡き王女の為のアスター

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未だ状況が掴めていないラギー･ブッチがかろうじて体を起こす


「Aさん…いや、その服…サラウォート総長ッスか…？」

『えぇ。ですがAでもあります』

「…もう訳が分からないっス…」


頭を抱えた彼にクスリと笑いを零す



「えーと、ぁー…まぁよくわかんないッスけど…これだけは断言できます」


私から視線を逸らした獣人がこの世界の私に向き直った



「その髪の方が似合ってるッスよ、Aさん」

「ラギーくん…」



よくそんなことを言えたものです

黄金の髪を持つ私の前で



…まぁいいや

私は徐に立ち上がる




『一体何から話せばいいのやら…』



自己紹介は済ませたし…

というか、説明する必要などあるのだろうか



…どうせこの世界線は終わらせるのだ

今ここで話した内容など、全てが元通りになった後は誰一人として覚えていないというのに



…けれど

これもけじめだ



ちゃんと話そう。全て打ち明けよう





『簡潔に言いましょう

私はA･ガーランド。ガーランド王国の第一王女とは私のことです』



そして、あなたのことでもある


そう、へたり込むこの世界の私に告げる

ボネセットを見つめたまま続けた



『あなたは私で、私はあなた

けれど厳密には完全に同一では無い』




世界線の話をしましょう

そう私は会場の観客に告げる



『世界線とは無数に広がる可能性です。私の髪を使って例えましょうか。例えばここにいる貴方たちの世界をこの一本とすれば…』


そう言って黄金の髪の毛を一本つまむ




『私の元いた世界はこっちの、別の髪の毛です』


それから、さっきとは反対側の髪を一本つまんでみせた




『私は別の世界線…パラレルワールドと言った方が分かりやすいでしょうか。そこからやって来ました。ユニーク魔法を使って

……信じていただけるかしら』


「……信じるしかねぇだろ、こんなの」


獅子の人が眉間を揉みながら言う




「じゃあ聞くけど…」


ふと、凛とした声音が耳に届き、肩がぴくりと揺れた



「アンタはなぜこの世界線にやってきたの。なんの為に」


真っ直ぐな瞳が私を射抜く

…あぁ、私の大好きな目だ




『貴方に会うためです。……ヴィルくん』


目を大きく開く想い人

彼から目を離さず続ける




『…そう。最初は"貴方に会いたい"、それだけだった』


でもいつしか欲張ってしまった

幸せな自分を、夢見てしまった




『だから私は過去に介入し、本来の運命を捻じ曲げたのです』

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