いちごたちの宝物 ー悪いけど、譲る気ないよ？ー

#46 もれてしまった言葉 さとみside ページ49

さとみside






俺は、「お兄ちゃん」だから。






何回も何回も自分にそう言い聞かせてきた。







なーくんとAが曲を聴いていた。ひとつのイヤホンを分け合って。2人の距離は、すごく近かった。







いらない。いらない。いらない、いらない、いらない。「お兄ちゃん」っていう肩書きが、時々すごく重い。






好きで兄妹になったわけじゃねぇんだよ。好きでこんなに我慢してるわけじゃねぇんだよ。







本当のことなんて、言えない。いや、言わない。父さんと母さんと俺で、そう決めた。







Aの手を握る。「お兄ちゃん」だから、許されることで。





「彼氏」っていう存在ができたら、「お兄ちゃん」にも許されなくなることで。







「ありがとうお兄ちゃん」




「さすがお兄ちゃん！」






今は俺が、こいつの1番近くにいる男。悲しい優越感に浸る。






こ「僕！？僕もかわいいこは好きだけど、Aみたいに胸ない子は無理！！」






そういえるお前が羨ましいよ、ころん。俺には、好きとか無理とか、そんな言葉を発することも許されない。






俺は、Aのお兄ちゃんだから。







「だからこそ、苦しいんだけどな」







あ、やべ。Aに聞かれたか？思わず漏れてしまった、本音。






「え？なんて言ったの？」






よかった。聞こえてなかったみたいだ。安心する。







適当にごまかしたけど、それでも気になるのか、Aは俺を見てくる。






いつか、俺のことなんてどうでもよくなるくらいの恋を、誰かとするんだろうな。






悔しくて寂しくて、それでもAには嫌って欲しくなくて。あーあ、かっこ悪いな、俺。すとめもブックとかでは恋愛について色々喋ってんのに。






Aに向かって笑う。ちゃんと笑えてたといいんだけど。






イケメン？優しい？大人？理想？







そんなの当たり前だろ。俺以上の男なんていないってぐらいにしとかなきゃ、すぐ取られる。Aには、幻滅されたくない。







メンバーのみんなでスカイツリーの中へと入る。







羨ましいよ、ほんとに。







だれでもいいから、「お兄ちゃん」変わってくんねーかな？w









何度、そう思っただろう。

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