いちごたちの宝物 ー悪いけど、譲る気ないよ？ー

#36かわいい独占欲 ページ38

慣れてるとは言っても、やっぱり嫌なものは嫌だ。






何か曲を聴こう。ポーチからイヤホンを取り出す。






「ね、なーくん、なんかおすすめありますか？」







やっぱりジャケットがないとクーラーが効きすぎている電車内は寒かったようで、ジェルくんにぴったりくっついていたなーくんに声をかける。






な「おすすめー？んー、そうだなー」






なーくんがあごに手を添えて考え込む。まつげが長くて、横顔も綺麗だ。







な「ここはリーダーとして、6人で歌ったやつおすすめするべきなんだろうけど・・・ちょっとスマホ貸して？」







なーくんがわたしのスマホで何か検索する。







な「俺がカバーした、乙女解剖っていう歌！結構お気に入りなんだ」







あ、たしかお兄ちゃんもカバーしてた。画面をスクロールする。






「あ、6人みんな歌ってみた出してるんだ！みんなのも聴いてみよう」







なーくんがわたしの名前を呼んだ。







な「・・・俺、おすすめしたい歌、まだまだあるからさ！」





このあとも俺が選曲していい？となーくんが聞いてくる。なーくんの選曲なんて、いい曲しかないに違いない。






「ありがとう・・・！」







お礼を言うと、なーくんは少し安心したように笑ってくれた。








「・・・じゃ、再生するね？」







再生ボタンをタップしようとする。







な「あ、待って待って」







なーくんが私の手を柔らかく掴んで、それをとめた。






な「ごめん、やっぱこの歌最初に聞いてほしい！！『ロキ』って検索してみて？」







言われた通りに検索してみる。






「知ってます！すごく元気な歌ですよね！」






な「そうそう！この曲めっちゃ元気になれるんだよねー！・・・あっ」







なーくんが声をあげる。イヤホンをつけようとしていた手をとめる。







な「・・・ごめん、俺イヤホン持ってきてないっぽい・・・。片方、借りていい？」








・・・え？か、片方？







な「・・・や！ごめん！俺今すっごい変なこと言ったよね」






なーくんがわたしから一歩離れた。







な「ほんとごめん！忘れて！嫌、だったよね」







「え？いや、そんなことないです！全然かします！」







嫌、という言葉について慌てて否定する。そして、なーくんに左耳側の方のイヤホンを手渡す。







な「・・・ありがとう」






なーくんがはにかんだような笑顔で言った。

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