第49話 ページ49
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「君は本当に、ボクが知ってるルノアールなのかな……?」
一瞬だけ、顔色が変わったような気がしたが、勘違いだっただろうか。
「そんな事を訊くなんて、お門違いだろう?」
「そ、そうだよね。………でも」
――こんなにも仲間に壁を作ってたっけ……?
大罪の中では多分、一番仲が良かった方だとおもう。
素っ気ない態度でも、ディアンヌは笑顔で自分の知り合いに似てると、快く受け入れてくれた。
でもここは、この夢はあくまで偽りにすぎない。
この服も、学校とやらも、風紀委員長という肩書きも、今目の前に話している人物だって幻にすぎないのに……なぜそんな事を聞いてくるのか。
それは明白だ。
自分自身、周りにそう思われているのではないか? という感情の断片を夢として現れたのだろう。数年前から右半身だけ呪われてしまったこの体は、時々異変を起こすのだが、今回は睡眠中の心的現象らしい。
なんだか笑いが込み上がり、ルノアールは息を溢した。
「自分でも時々解らなくなる。だから何かあった時、お前らの手で止めてほしいんだよ」
夢だから、このディアンヌに言っても現実に届く事はないけれど。
何か言いたげな顔だったが、ルノアールは階段を上り彼女の前から静かに消え去った。
「ルノアール様!」
「……?」
走ったら聖徒会の奴らに注意されると言うのに、エリザベスが構わずこちらに駆け寄ってきた。連れは誰もいなく、一人でここまで来たようだ。
「よかった……ご無事で」
肩で息をしながら見上げる王女の顔は、怖いものを見たかのような表情をしていた。そのまま自分から歩み寄り、ルノアールの背中に腕を回す。
「……何か可笑しいぞ、王女様」
「……そう、ですね。……でも、嫌な予感がしたんです………貴方が私達の前で死んでしまうような、気がして」
「………」
胸を押し付けながら青い瞳を潤ませ見上げてくる彼女に、さりげなく銀髪の頭を撫でてやると、一滴頬に伝っていく。
王女の口から人の死を語るなんて、現実と夢が相まっているのだろうか? だとしたら何か強い衝撃があれば、ふざけた学園物語も幕引きになるのだが……。
「大丈夫だよ、王女様」
あくまで冷静に。ルノアールは語りかける。
「俺はまだ死なない。ずっと泣いていたら、メリー団長が悲しむぞ?」
「は、はぐらかさないでください……!! 私本当に……!」
顔を真っ赤にしながら、ルノアールの服を両手で掴み上目で睨み付けるが、効果は皆無に等しい。
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