第40話 ページ40
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「……何してる?」
「いや何も?」
「じゃあその手はなんだ」
「……なんだと思う?」
わざとらしく ニヤッ と悪人染みた笑みを作り、ルノアールの顎を持ち上げ、親指を使い唇を這わせた。
「分かんねぇなら、自分の体に聞いてみるがあぐっ!?」
「ふざけるな阿呆が」
そう罵り、ルノアールは躊躇なく手を剣のように構えバンの首に深々と突き刺した。不死身とは言え痛覚が無くなるわけではない。湧き水のように溢れ出る血は、ベッドを汚し、ルノアールの服も赤黒く変色していく。
ズブリ… と引き抜く生々しい音。
首を押さえ立ち上がり、一歩二歩とふらつきながら交代するバン。
「うっ……ううっ……!」
呻き声を漏らしながら、しかし首の傷はすでに完治されている。あまりいうことの効かない体を無理やり起こし、返り血を浴びた頬を拭いながら、ルノアールは冷めきった視線を送る。
「演技はいいから」
「……ちぇ、少しくらい同情しろよ♪」
何事もなかったようにバンは、へらへらと笑いながら近寄った。
「何しても死なない奴にいちいち同情かけていたら、身が持たないだろ」
「そりゃそうだわ♪ でも看病してやったのにいきなり襲うこたねーだろーがよ」
「……お前ら、俺に悪戯しかしないだろうが」
お前ら と言うのは、勿論バンとメリオダスを差している。
「なんだよ〜少し眼帯の奥がどうなってんのか気になっただけだろ。………な、見せろよ♪」
ペロッと舌舐めずりし無理やりにでも剥ぎ取ろうとする強欲男に、にやりと笑い返す。
「出来るならな」
「!」
しまった という顔で床を見た。
バンの影がルノアールの影によって捕まえられ、いつの間にか体の自由が効かなくなってしまっていた。
絶対領域。それは自分から影を伸ばすのと違い、三メートルと範囲は狭いが、悪意ある人間を察知し、瞬時的に必ず動きを封じる事が出来る影の能力の一つ。
強奪(スナッチ)と同じ間接的魔力の持ち主だが、発動させる素振りはなく意識だけで操るのは至難の技。まさか十数年で影(シャドー)を完璧に使いこなせるようになったのかと、バンが考えていれば ふらり と 突然力なくベッドに倒れ込んだ。
「ルノアール!」
「……っうるさい。少し目眩、するだけ、だ」
「だったら大人しく、影を消して安静しとけ馬鹿!」
刹那 フッ と魔力が弱まり、同時にバンは金縛りから解放され急いでルノアールの様子を伺う。
浅く肩で呼吸をし、目は虚ろげでいる。
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