【七つの大罪】虚飾の影法師 (ページ31)

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第31話ページ31

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ルノアールは起き上がる気配がないグリアモールをよそに、見習い騎士に歩みを進めた。

「ひっ……く、来るな！！」

カタカタと震えながら剣を抜き、老人の首筋にあてがう。
だが、お構い無しと言わんばかりに近付いていくと、ルノアールは刃を掴み近くに投げ捨てた。
赤く染まりあげるグローブは、見習いの首に伸びる。
ガッと力強く絞めると、必死にその手を離そうと抵抗する男に嗜虐的な笑みを刻む。その隙に老人は自力で男の腕から逃げ出した。

「か…っや、やめ……こ、殺さない、で、くれ…っ！」

とうとう泣き出してしまい、雨と涙で見習いの顔を濡らす。

「ルノアール様、やり過ぎです…！このままじゃ…！！」

ふん、と気にくわない素振りを見せ、ルノアールはエリザベスの声を受け流した。

「いざ自分が殺されそうになると命乞いか？最初にエリザベス王女に手を出したのはお前らだろう」

違うか？そんな風に訴える眼力と、締め付けていく手の力が徐々に増していき、見習い騎士の足が地面から浮いていく。

「が……かあっ！や、い、息、いきが…あぁ……！」

顔を真っ赤に酸素を求め死にたくないと悲願し泣き続る姿は、思わず目を逸らしたくなるほど酷いものだった。
唇を噛むと、エリザベスは走ってルノアールの腕を男の首から離そうと引っ張る。

「お願い、もう止めて…！！」

「……王女様？」

「命だけはとらないであげてください…！お願いですから、どうか……！」

「……………………」

ルノアールは少し目を見開いた。
こんな弱い力では男を助ける事なんて出来ないのに、それでも食らいつくように男を助けようとする。そんな王女の姿を見てしまったら見習いの命を奪うのも馬鹿馬鹿しくなってきたのか、ルノアールは捨てるように手を離した。

「っ？！げほ、ゴホゴホ……！」

ドサッと男は転げ落ち、自分の首を押さえながら肩で空気を吸い込んだ。

「………死にたくないんなら、さっさとあいつを連れていなくなれ」

倒れているグリアモールに向けくいっ、と顎で催促させると、男は恐怖のあまり何度も頷いた。
立ち上がり、ふらつきながら歩く。グリアモールの腕を持ち上げ肩にかけると、重いため引きずる形になり、男は乗って来た馬の手綱も一緒に引き、その場から逃げるようにいなくなった。

刹那。壊れた民家から物凄い速さでルノアールに突進してくるピンクの物体が。