第4話 ページ4
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「……いつまで黙ってるんだ?」
棘がある声にビクッと肩を揺らす。
30人という聖騎士達が、男か女も見分けが付かない人物にずっと足止めをされ、かなり時間が経つ。
全体的に黒を主調した服を包み、目が悪いのかは分からないが、右目から頬に掛け真っ黒の眼帯を着けている青年(?)の姿は、どこか妖しく不気味にすら感じる。
怖い…と思った。聖騎士は騎士の中の騎士だと崇められていたが、自分達よりも膨大な魔力が青年から感じ、無意識にカタカタと手が震えていく。
だがリオネス王国の聖騎士の彼らも、見習いよりは魔力もあったし、熟知しているつもりだった。
青年から“お前は力を得て、何を得る?”と問われても、王国聖騎士長様の名誉を得る事だと胸を張って言えたのだが、何故か、自分達が思っている事を口に出せなかった。
左目を覗かせる青年の赤紫色が、スッと鋭くなる。
「何も言えないなんて、お前達の覚悟と誇りは余程ちっぽけなものなんだな」
フッ…と鼻で笑われた。
自由が効けばこんなガキ、剣で切り裂いてやれるものを…!!と脳内で叫んだが、聖騎士達はただ息を荒くし、睨みつける事しか出来なかった。
その時。青年の手が1人の聖騎士に向け、招くような動作し。
「弱い奴に用は無い」
手を握り締めた直後、ガシャンッと鎧の音たてながら前のめりに倒れた。衝撃で冑が外れ、小太りの男の顔が現れる。
「!……お、おい」
辛うじて顔が動く事が出来た聖騎士の1人が、掠れた声を出す。倒れた男に特に外傷は無かったが、生気あった目がくすんで見えた。
「――さようなら」
何も映さない無機質な目で彼らを捉え、青年は指を鳴らした。
次々と力を無くし倒れこむ聖騎士達。
何か抜かれたような虚ろな目をし、苦痛もなく亡くなった彼らを静かに見つめ、ズズッ…と聖騎士の影を捕らえていた青年の影が、足元に戻っていく。
「………」
咄嗟に振り返った。
誰かに見られているような気がする。
しかしこの肌に感じる魔力は……どこか懐かしい。
「隠れて無いで出てきたらどうだ?」
ガサガサと草をかき分け現れた、2つの人影は。
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