第30話 ページ30
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そのまま跳ね返され近くの民家に激突していったが、彼のお陰でグリアモールの体勢が崩れ、掴んでいたエリザベスの両腕も離させる事が出来た。
ぺたんと尻餅をつくエリザベス。
何が起きたのか上手く把握出来ないでいると、上空からひやりと冷気の如く冷めたハスキーが響いた。
「随分態度がでかくなったな、グリアモール」
塔から飛び降りてくる人影。
身を躍らせながら、エリザベスを守るよう前にスタンッと着地する………。
「王女に手を上げるとはいい度胸してるが、それなりの覚悟があっての行動だよな?」
ルノアールはエリザベスの手を引き、立ち上がらせた。
野次馬から王女を連れて逃げた犯人だ!!と飛び交うが、黙らせるように一睨みすれば一瞬にして竦んでしまった。
「貴様何者だ…?何故俺の名を知っている!」
剣を抜き、グリアモールはルノアールに刃を向けた。
返ってきた言葉はあまりにも平然としたものだった。
「あの時鎧を着ていたから分からないのも当然か。俺を覚えていないのなら、お前に名乗る名は無いな」
「何だと……」
鎧がガチャと擦れる。
グリアモールはルノアールの背後にいるエリザベスを見、再び視線を戻す。
「今すぐこちらにエリザベス様の身柄をよこせ。さもなければ………」
「何だ?」
剣をルノアールの顔に差した。
「聖騎士に刃向かった罪として、この場で貴様も処刑する!!」
「ル、ルノアール様……」
怯えた様子で見つめるエリザベス。
逃げなければ。そんな思考が浮かぶが、当の本人は面白そうに、口元が弧を描き不適に笑う。
「へぇ……それは楽しみだ。やれるもんならやってみろ」
それを合図に、グリアモールは前に突っ込んだ。
剣を握り直し、肩を狙って斬りかかる。しかしルノアールを狙った攻撃は空を切った。
「くっ」
ぎりっと歯を鳴らしながら人間の急所という急所を斬り込むが、全てぬらりくらりとステップを踏みながら躱される。
「どうした、俺を殺すんだろ?」
「黙れ!」
「剣の腕もまだまだだな。後、脇、開きすぎ」
背後に回り右正拳突きを食らわせた。
巨漢は見事に吹き飛ばされるが、ルノアールは攻撃の手を止める事なくグリアモールの頭部に蹴り落とす。
そのまま地面に落下し、ズシャッと物凄い音をたて倒れた。
周りは呆気にとられ固まっていたが、此方に視線を送るルノアールに気づいた野次馬達が、悲鳴混じりに散り散りと逃げていく。
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