情愛中毒。 (ページ38)

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(人1)side

今頃、このリゾートにはYN社の幹部たちが視察に訪れていて、(人2)は意気揚々と対応しているばずだ。

そして、そんな彼女の姿を、中島弁護士は満足気に見つめているに違いない。

そのような光景が嫌というほど想像出来たから、私はなおさら必死だった。

ところが、私の思いとは裏腹に、どんなに頭を働かせても妙案は浮かんでこない。

もう打つ手は無いのだろうか、と絶望的な気持ちになりつつも、とりあえず少し休憩をしようと思い外に出た。

庭の芝生の上で寝転がってみると、次第に眠気が襲ってくる。

「……少しだけ、ね。頭をスッキリさせて、また考えるしかないわ」

自分に言い聞かせるようにそう呟いて、私はそっと目を閉じた。

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少しだけ…と思っていたのに、随分と深い眠りについていたらしい。

照りつける太陽と、全身を濡らす冷たさで、私は驚いて目を覚ました。

「おはようございます。どれだけ寝れば気が済むんですか？」

どこか呆れたように笑いながら言ってくるのは、紛れもなく菊池風磨だ。

その左手には青いホースが握られていて、先程の冷たさはここから撒かれた水の所為だと気付く。

「ほら、早く起きたらどうです？みんなをやっつけに行きましょうよ」

状況を上手く掴めない私に、早く着替えて来るよう促した彼。

全身を濡らされたというのに、何故だか怒りは沸いてこなくて、私はただ素直に従った。

「まずは朝食を食べましょう。腹が空いては戦が出来ぬって言葉もあることだし」

庭に置かれたテーブルの前に腰掛けると、彼はそう言ってサンドウィッチとスープを広げる。

「コンビニの物で申し訳ないですけど、案外悪くないでしょ？」

「どうして来たんですか？」

私は至って真剣にそう聞いたけれど。

「飛行機で。あ、タクシーも使いました」

彼は惚けたように答えてみせる。

しかし次の瞬間、食事の手を止め視線を上げた彼は、真っ直ぐな瞳で私を見つめた。

「貴女に会いたくて来たんです」

その言葉に、私の心が揺れた。

鼓動が早まって、自分でもコントロール出来ないような、不思議な感覚に包まれる。

「貴女が芝生で爆睡している間、申し訳ないけど勝手に部屋に入らせて貰いました」

「……え、？」

「それで、一睡もせずに財務表と睨めっこ。こんなに頭を使ったの、学生の時以来です」

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