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No side
(人1)が何とか遮ろうとするも、社長は質問を止めようとしない。
「経済的な理由でないなら、何が原因で辞めたんだ?」
「辞めたのではなく、除籍になりました」
初めは柔和な作り笑顔だった社長も、今では詰問調になり、なぜ除籍になったのか風磨を追求する。
フォークを持つ手が震える(人2)。
(人2)に視線を送る中島弁護士。
(人1)は父の無礼を止めようとするが、風磨は自分でどうにかしようとするつもりらしい。
「社長が身元調査をなさっているのなら、僕はこれ以上答えたくありません」
収まりの付かない社長は、怒りの矛先を(人1)に向ける。
「お前が代わりに答えてみろ。彼が大学を除籍になった理由は?知らないのか!?」
社長の声が大きくなるにつれて、(人2)は震えが止まらなくなった。
水を飲んで落ち着こうとグラスを持つ手も震え、それは手をテーブルの下に引っ込めても止まらない。
そんな彼女の手に、隣に座る中島弁護士が自らの手を重ねた。
まるで「大丈夫だよ」という言葉を伝えるかのように。
激昂する社長に、「そんなこと、知らなくても大したことではありません」と返す(人1)。
「この人が私と出会う前に何をしてきたか、過去がどうだったか、そんなことには一切興味がないです。
なぜなら、私にとって大切なのは、この人の現在と未来だから。
私と出会う前にこの人が大学を除籍になった理由なんて、私には関係ありません。
お父様こそ、ご存知なんですか?
今の私よりも年若い頃、妻と娘がいる社長を誘惑したあの方について。娘と数歳しか違わない、あの方について。
あの方に秘められた二面性や過去について、一体どれだけご存知なんですか?」
(人1)の顔に水をぶちまけた社長。
「こんな嫉妬深い、どうしようもないバカ娘に、私は東堂の未来を預けようとしていたのか」
そう言って中島弁護士を連れて出て行こうとする。
(人2)もその後に続こうとしたが、「お前はあの若者と話をつけてから来なさい」と厳しく告げられる。
「子どもの面倒を見るのが親の務めだ。彼が欲しいと言うだけ金をやれ。なかなか切れないようなら、 恐 喝 罪 で訴えればいい。(人1)の母親が生きていたら当然やったであろうことを、お前がやるんだ」
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作者名:北斗七星 | 作成日時:2018年3月22日 18時