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No side
身なりを整え、更衣室から出て来た女性たち。
人前に出た途端、またしても(人2)の猿芝居が始まった。
優しく(人1)のシャツの襟元を直す(人2)に、(人1)は呆れ顔だ。
その時、(人1)が嬉しそうに目を輝かせて、(人2)はその視線の先を追った。
「ほんとに来たんですね」
嬉しい気持ちをグッと抑えて、クールに言ってみせる(人1)。
「だって、約束したでしょ?起きたらすぐに会おうって」
それに対して風磨は笑みを浮かべて返すから、(人2)はすっかり固まってしまっている。
そんな(人2)の状況を知ってか知らずか、(人1)が風磨のことを紹介しようとすると、風磨は「知っているよ」とにこやかに答えた。
「記者だった人でしょ?不正や社会の不条理を許さない、正義の記者。藤城(人2)さん。あ、今は結婚しておられるから 東堂さんか。僕、ファンだったんですよ」
「ほんの短い間だったのに、覚えてくれている人がいて良かったですね。しかもファンみたいだし」
そう嫌味を言う(人1)を見て、(人2)は取り繕うように口を開いた。
「ありがとうございます。ファンだなんて」
「でも、今は違います。残念ながら」
その言葉に凍てつく(人2)。
するとタイミング良く、社長が現れた。
(人2)は慌てて車椅子に駆け寄る。
風磨の姿に驚いたのは、中島弁護士も同様だった。
「そちらは?」と言って風磨を見つめる社長に、(人1)は迷わず「付き合っている人」と紹介する。
その後、ジムが入っている建物のVIPルームで一緒にブランチを食べることになった風磨。
初めて紹介された娘の彼氏に、社長は少し嬉しそうだ。
「ご両親は何をなさっているのかな?」
「2人とも亡くなりました。生前、父は田舎で商売をしていました。母は僕を産んですぐに亡くなったそうです」
いきなりの展開に、ぎょっとする(人1)。
風磨について何も知らないのだから無理もない。
「それは、すごく苦労をされただろうね。学校は?今はどんな仕事を?」
緊張が高まる(人2)は、不安げな表情を浮かべている。
「大学は途中で辞めました。今はバーテンダーをやっています」
その答えに驚きを隠せない社長。
大学を辞めたのは経済的な理由からか?と聞かれた風磨は、違うと即答した。
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作者名:北斗七星 | 作成日時:2018年3月22日 18時