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風磨side
朝のジョギング中、俺はふいに足を止めた。
頭に思い浮かべるのは、(人2)さんのこと。
あの日、飛行機の中で「貴方は医者じゃないでしょ?」と叫んだ彼女。
1億円を恐喝された、と嘘を吐いた彼女。
そして、昨夜、社長秘書である中島にキスをしていた彼女のことを。
「明日も明後日も会いましょう」と言った(人1)もまた、(人2)さんに対して様々な想いがあるのだろう。
それらの想いが具体的にどんなものなのか問われても、俺はきっと答えることが出来ない。
ただ1つ分かるのは、俺も(人1)も、東堂(人2)という女性に対して何らかの復讐心があるということだけ。
復讐心を抱いた理由は違っていても、ベクトルが一緒ならそれでいい。
「じゃあ、起きたらすぐに会おう」
俺がそう言った時、義理の母娘の表情は笑えるぐらいに対照的だった。
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(人1)side
いつも通っているジム。
よろけてランニングマシーンから転がりそうになっている女性を、私は支えて受け止める。
「何を考え込んでいるんです?結婚式を控えているのに、気を付けなくちゃ。
それとも、怪我をするところを見届けるべきだったかしら?私、惜しいことをしたかもしれないですね」
私は何食わぬ顔をして、(人2)の隣のマシーンでウォーキングを始めながら、更に挑発的な言葉を続けていく。
「目標まで、もう半分ぐらいは来ました?人生って簡単ですね。思惑通りに着々と進んでいくんだから。
でも、邪なことを企む人は、途中で必ず挫かれるらしいですよ。上手くいっていると思って、気を抜かないようにして下さいね」
トレーニング後、シャワーを浴びて髪を乾かしているところに、(人2)がやって来る。
「昨日のあの男は誰?」
隣の椅子に腰掛けた彼女は、厳しい口調でそう尋ねてきて、私は思わず冷笑を浮かべた。
「私のプライベートに関心を持つなんて、何だか珍しいですね」
「貴女が誰だか知っていて近付いているのよ。何か企んでいるに違いないわ、あの男。私、ああいうやり方に詳しいの」
「ああいうやり方?あぁ、自分がそうだから?仮にそうだとしても、関係ありません。
東堂(人2)さんを経験済みの私に、まだ怖いものなんてあると思ってるんですか?」
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作者名:北斗七星 | 作成日時:2018年3月22日 18時