検索窓
今日:9 hit、昨日:22 hit、合計:59,162 hit

*25* ページ25

風磨side






「私、この子を育てる自信ないです。食べさせるお金もないし、何だか性格もキツくなったみたいで」






そんなふうに言ったかと思えば、今度は(人3)の方を向いて言葉を発し始める。






「あの人かアンタ、どっちかを選べって言われたら…私はあの人を選ぶわ。
あの人無しじゃ、生きていけないのよ。何だかんだ言って、あの人とは20年も一緒にいるんだから。

正直ね、私はアンタに愛情なんて無いの」






その言葉が、深く心に刺さった。



信じていた人から放たれる痛みを、(人3)はどんなふうに受け止めるのだろうか。






「アンタのことは、赤ちゃんの時にお兄ちゃんに預けて以来、ずっと忘れてたのよ。
ほら、別にアンタの父親と大恋愛の末に生んだわけでもないし」


「……(人3)、早く荷物をまとめて来い」






次々と飛び出してくる耳を疑うような言葉を遮りたかったけれど、(人3)も何かを言わずにはいられなかったのだろう。



「すごい。母親のくせに、よくそんなことが言えるね」



冷たく紡がれたその言葉は、(人3)の怒りや哀しみを痛いほどに反映している。





けれど、そんな(人3)の想いにも気付くことなく、母親は矛先を再び俺に向けた。






「だから、お兄ちゃんのところに行きなさいよ!腹違いでも兄妹でしょ?
アンタだって、20年も面倒を見たなら最後まで責任持ちなさいよ!!」


「……(人3)、早く荷物をまとめて来いって言ってんだろ!!」






家に向かってスタスタと歩き始めた(人3)を横目に、母親は俺に近付いて卑屈な笑みを浮かべた。






「あの子が結婚することになったら、必ず私に連絡ちょうだいね」


「しませんよ、連絡。絶対に」





.





(人1)side






東京への帰り道。


妹さんは後部座席に乗って、菊池風磨の知り合いだと紹介された私は助手席に乗り込んだ。






「疲れただろ。家に着くまで時間かかるし、寝てればいいよ」


「うん。ありがとう、お兄ちゃん」






静かなBGMのなか、少しの会話さえもない私たち。


彼は相変わらず、無表情のままハンドルを握っている。





暫く経った頃、後ろに座る妹さんが小さく嗚咽を漏らしながら泣き始めた。


すると、運転席にいる彼はBGMの音量を上げていく。





言葉では表さずとも、それは“妹”が思い切り泣けるようにする為の“兄”としての優しさ。





ほんの少し、菊池風磨という男に興味が湧いた。






*26*→←*24*



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (113 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
480人がお気に入り
設定タグ:菊池風磨 , sexyzone
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:北斗七星 | 作成日時:2018年3月22日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。