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風磨side
倒れている(人3)の母親がこれ以上傷付かないよう、男を制止するだけのつもりだった。
けれど、俺が背後から羽交い締めにしてもなお、汚い言葉で(人3)の悪口を言う男に どうしても耐えられなくなったのだ。
「ふざけてるのはアンタだろ…」
思わず漏れた心の声を合図に、俺は男を倒して馬乗りになりながら何度も殴った。
いつだって(人3)の意思は尊重してあげたいけれど、母親のところへ行くというのなら話は別だ。
生まれて間もない(人3)を捨てて出て行った彼女が、(人3)を幸せにしてくれるとは到底思えないから。
けれど、どんな人間だとしても…彼女が(人3)の母親であることには変わりない。
だから、(人3)の為にも、この女性が傷付かないように……
「やめてっ!!」
甲高い声とともに、背中に鈍い痛みが走る。
一瞬何のことだか分からなかったけれど…何度も襲ってくる痛みと、「お母さん何してるの!!」という(人3)の焦ったような声を聞いて状況は把握した。
何故こんなことになるのだろう。
俺は(人3)の母親を助けたはずなのに、どうして彼女から殴られているんだ。
段々と増していく痛みに、俺は胸を押さえたまま起き上がることが出来ない。
(人3)に制止された母親は、店を散々荒らした男の後を追って出て行った。
あぁ、どうしようもないほど腹が立つ。
D V で相手を服従させようとする男にも、その男の 奴 隷 と化した(人3)の母親にも。
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防波堤の上に腰掛けて、穏やかな夜の海を眺める。
静かな波音は、俺の荒れた心を多少は鎮めてくれた。
「肋骨の怪我、まだ治ってないんでしょ。早く病院に行った方がいいんじゃないですか?」
「……まだ居たんですか」
「はい。喧嘩を見物していました。………かっこ良かったですよ、2対1の闘い」
いつまでも此処に居ても仕方がない、そう思ってゆっくりと立ち上がると。
まるで見計らっていたかのように、母親が(人3)の手を引いてやって来た。
「この子、早く連れて帰ってちょうだい」
「何言ってるの、お母さん!!私を捨てて20年も放ったらかしだったくせに。これ以上お兄ちゃんに迷惑掛けないで、これからはお母さんが私の面倒を見てよ!!」
叫ぶような(人3)の言葉に見向きもしないで、母親は俺に向かって訴え続ける。
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作者名:北斗七星 | 作成日時:2018年3月22日 18時