*23* ページ23
(人1)side
「どういう意味よ…」
「言葉通りの意味、だけど。俺が本気で口説いたら、アンタはどうすんの?受け入れるのか、受け入れないのか」
「……ふざけないで。私、こんな話をする為に来たんじゃないのよ?」
「じゃあ、どんなつもりで助手席に乗り込んだわけ?」
何を言っても無駄だと思った。
この男が何を考えているのか分からないし、別に分かりたくもない。
「……私降りるわ。早く車を止めて」
「俺、目的地に到着するまで休憩しないタイプなんだ。最初に言ったよね?」
真っ直ぐ前を向いたまま、少しも表情を変えることなく、淡々とそう言ってのける彼。
気付けば、いつの間にか車は高速道路を走っていて、私は溜息を溢さずにはいられなかった。
本当に一度も休憩をしないまま走り続けて、車は目的地に着いた。
道路標識に書かれている地名は今まで聞いたことがないもので、一体ここが何処なのか分からない。
「ねぇ、ここ何処なの?街灯も少ないし真っ暗だし、」
「遠くまで行くって言っただろ。ほら、早く降りて」
「ちょっと、!!」
車を降りて歩き出す彼を見て、私は慌てて助手席のドアを開ける。
小走りで彼の後ろをついていけば、彼はピタッと足を止めて振り返った。
「あそこの横断歩道を渡って 来た道を少し戻れば駅に向かうバス停がある。今ならまだ間に合うよ」
「は、?」
「ここ田舎だし、早くしないと終電無くなるけど?」
「何なの、早く帰れって?バカにしないでよ。こんな遠い場所まで来たんだから、アンタが何をするのか見るわ!」
私の言葉には興味がないといった様子で、彼はまた歩き始めた。
その先にあるのは古びた食堂のような場所。
何組かのお客さんが食事をしているが、そのなかで一人だけ、異様な雰囲気を纏った中年男性がいた。
「ふざけるな!(人3)の奴が通報しやがった。ギャンブルと暴力だって?そんな何の証拠もないことで、警察に行く羽目になったじゃねぇか!!」
店主であろう中年女性を口汚く罵った男は、近くにあったテーブル上の食器類を床に叩きつける。
そして、男が怒りに任せて女性を突き飛ばすと、その異様な状況に怖くなったお客さんが何人か店から出て行った。
「あの小娘のせいで、俺は警察にまで行く羽目になったんだ。お前がちゃんと教育しないからだろ!!」
*
480人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:北斗七星 | 作成日時:2018年3月22日 18時