情愛中毒。 (ページ13)

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風磨side

『お兄ちゃん！今どこにいるの？』

「ちょっと用事があって出掛けてる。何かあったのか？」

『早く帰って来て！家に……警察の人が来ているの…』

機械越しに聞こえる妹の声は震えていて、それがあの日の(人2)さんからの電話を思い出させた。

運命を変えた、あの着信を。

「今すぐ帰るから。大丈夫、何も心配いらない」

.

電話の後、急いで帰宅した俺を待っていたのは、警察官が2人と泣き腫らした目の(人3)。

「菊池風磨さん、ですね？」

「はい、そうですけど」

「東堂(人2)さんに対する恐喝容疑がかかっています。署までご同行願えますか？」

その言葉に先に反応したのは (人3)の方だった。

警察官と俺の間に立って、俺を守るかのように両手を広げる。

「私のお兄ちゃんがそんなことするはずありません！何かの間違いだから、早く帰ってください！！」

「間違いかどうかを確かめるためにも、署で詳しく話をしたいんですよ」

「お兄ちゃんがそんなことをしない人だって、そんなの私がいくらでも証明してあげるから！！」

警察官に向かって声を張り上げる(人3)の肩に、俺は優しく手を重ねた。

駄々をこねている子どもを宥めるかのように、ポンポンッと肩を叩く。

「こんなふうに雨に濡れたらダメだって、先生にも言われてるだろ？ほら、早く家に入って乾かしておいで。風邪を引いたら大変だ」

「嫌だ！お兄ちゃんが入るまで私も入らない」

「ワガママ言うなよ、子どもじゃないんだから。風邪引いて悪化したら、また入院になるぞ」

(人3)は身体が弱い。

そのうえ持病もあるから、ちょっとした風邪でも命取りになってしまう。

それは(人3)自身もよく分かっているはずだ。

「(人3)は俺が何もしてないって信じてるんだろ？なら大丈夫だよ、すぐに帰って来るから」

“すぐに帰る”と言ったくせに帰れなかった、あの日のことが頭を過る。

ささやかな幸せが崩れて、運命が狂い出したのは、紛れもなくあの日からだ。

「署まで同行します。早く行きましょう」

淡々とそう告げて、俺は必死で俺のことを呼び止めようとする(人3)を背中で感じながら、静かにパトカーに乗り込んだ。

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