【FGO】The Menders (ページ8)

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1．マスター・ジョーカー(4) ページ8

ひとつめの戦いを終えて不必要とされた彼らが皆還ってから、ふたつめの戦いに投じた時。再度己の声に応えてくれた者達だけが此処に在る為、今やその古参達でさえ数少ない。
古きも新しきも問わず、その少ない縁が余計に、空いた記憶を浮き彫りにするようで孤独を思い知らせるのだ。

｢…起きるがいい、その揺蕩いは毒だ。俺の炎では…到底掻き消せんものだ｣

走馬灯のような冒険物語が脳内で始まっていた最中、低くも、柔らかい声色に意識を呼び戻す。
危ない、サーヴァントの居る前で自責に駆られ曇天を抱える所であった。…否、手遅れか、こうしてその手と口が、こちらの意識を引き上げてくれたのだから。

｢…ごめん｣
｢謝るな、礼を言え。｣

額を撫で上げ、前髪を避ける仕草にやはり保護者だなと呆れにも似た安堵が心を覆う。そうすると、段々と思考は鈍り、瞼は重力を知って、微睡みが全身を拘束して行く。

｢…よばれ、たら、……おこして｣
｢……了承した。｣

憎悪と憤怒の化身が放つ凶悪な眼光は最早過去の物。今彼が見せ付けてくる慈愛はきっと自意識過剰や、保護者のそれなどではなくて、きっと本物だということは痛いほど知っている。
けれど、それを真に受け止められる程今己の器には空きが無く、毎度戯言として片付けてしまうことをどうか、許して欲しいと思う。

きっと己が心に触れるに一番近い存在であるが故に、真意を察してくれるだろうと怠けることを、許して欲しいと思う。

｢―――今更だ、マスターよ。…貴様の願いで生まれた俺に、逃げ場も行先もあるまい。
俺の執着を足蹴にしてでも守るべき領域が貴様にはあろうよ、そんなことは知っている。…知っていて、俺は止めない
あぁ、狡猾だな、我がのみならぬ、ジョーカーよ… だが許そう。貴様は俺の唯一たりえるのだから｣