1.マスター・ジョーカー(3) ページ7
「あぁ…そう言えば。あの異聞帯の王との連携が特に良いと一時期強化を施していたな。お陰様で"777"だ。運気も上がり大分調子が良い」
「運気は気のせいでしかないと思うけどね?」
現代に置ける造語の扱い方の誤り具合は誰に似たか、教えられたのか。ここでもいっとう古参である魔術師の古代王を脳内に浮かべながら似た発言指向を感じ取る。
自分でもよく分かっていないままにドヤ顔決める復讐者を遇いながら、嘘偽りなく考えていたことを吐いた。
「一応、黄金律だけでも上限まで強化しておきたかったんだ。そうしたらスカディさまと君の宝具による迎撃範囲もきっと広がる」
「…ほう、ほう! それは良いな! 強化が済めば殊更、俺の駆り出される場も必然的に増えるということだろう? この上ない愉しみとなろうな! 今すぐ頼む!」
「無理、爪多すぎ」
「ムゥ…」
彼と彼を作り上げた幻想で出逢ってから、この呼び声に応えるまでの間隔はとくに早かった。気まぐれからなるたった一度の多重召喚で二体も来たのだから、正直僥倖や縁よりかは、因果を疑ったものだ。
当時は自分がマスターという任に立ち、"この戦い"の真の意味と向き合い、対決を図る直前の頃。戦力としては十二分ながら雑兵を任せれば一騎当千。しかし同時に、復讐者の他者を巻き込む形のデメリットに頭を悩ませた日々は今や懐かしい。
「おい、物思いか?」
「……ん、君が…来た時のこと思い出してた」
「……そうか」
…あぁ、そうだ。あの時は、己に"切り札"という荷を賭けた…敬愛する医師が居た頃だ。あの人が居た事実を、思い出に変えられてしまうその境界を跨ぐ、その頃合に彼は来たのだった。
新参ながら、己の情けない、最悪の時期を見ていながら、それでも尚付いてきてくれていた一人だった。
「…マスター」
故に、彼は己をそう呼ぶ。…いや、そうとしか呼ばない。
自らの本名などと、そんなものを教えた人はただ一人一度きり。だがもうとっくにその人はこの世に存在せず。古参のサーヴァント達は、あの人の遺物ですらあるそのあだ名でこちらを慕うか、嗤うか、親しむばかり故、度々己というものを見失いそうにはなる。
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作者名:らんぱく | 作成日時:2019年11月17日 7時