2.The Menders(3) ページ11
「暗いな。あぁ暗い暗い暗い! いくら嘆いたとてドクターは死に、絶え、マスターは塞ぐままなのだ。そんな与太話を続けるくらいなら温かいココアのひとつでも用意してやれ!
どうせ冷めることになろうともな、運べる奴なら見繕える程度に。此処には馬鹿が多いはずだが?」
大抵が己よりも大きく、己より大層な偉業を成し遂げ、己より強い英霊達に浴びせなければならない叱咤。当然ながら飛んでくる睨み達に、萎縮を知らず吐き捨てる。
「無銘、ココアを作れ。マスターの大好物だ。……釣る訳では無いが、な。これは打開策だ。
不本意ながらもこのカルデア最古参、そして聖杯込Lv.100のこの俺が! 舐め腐った貴様らに提案をしよう」
視界の隅で頷く赤い弓兵。その外套が翻ると同時に、すべての視線がこちらを刺す。
その中で立ち上がる2人のサーヴァントに、呆れ果てた溜息で追い返そうとした。
「王妃、そして顔の無い王よ。無慈悲だが、今件俺達に出来ることは無い。
吸血鬼、無銘も当然だ、その他歴の長いもの、マスターと交流の深いものすべてがこの策に乗ることは出来ない。…許せ」
信ずることがすべて。そう言い切れば分かりやすく落ち込む王妃と、嫉妬の籠った声で見下ろす緑衣を見上げ、改めて群衆へ問い上げた。
「マスターの部屋に侵入でき、好物を届けられる。かつ縁はあってもなるだけ歴の浅い者は居るか。
…こういう場ではアサシンが適任なのだろうが、生憎此処には枯渇しているクラスだしな」
「……アンタそんな言い方じゃ、手ェ挙げられる奴なんてそうそう…」
当然、手を挙げる者が数えられるかすら怪しいことは分かっていた。
何故ならウチのマスターは博愛上等みんななかよしこよし大魔王、関係の希薄な者を出せと言う方が難しいこの状況でこれを望むのには当然訳がある。
そして、その適任が見い出せるだろう可能性も含めて想定済だった。故に、かなり遠回しな呼び声に、空気が揺れる。
「俺が行こう…」
己が目前で迸る黒い雷、当人が復讐の炎と名付けるその切れ間から、闇は人の形を作って紳士を立てた。
そう、俺が選ぶのはお前だ。
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作者名:らんぱく | 作成日時:2019年11月17日 7時