【FGO】The Menders (ページ16)

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3．王の財宝・貴方のための物語(1) ページ16

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その始まりは、束の間の終幕に至るが前夜。第7の戦いにて兆候を見せていた。

鍛錬と建築、そして決戦を控え休息を任務として与えられた古代国の星夜。
鶴翼の陣で建てられた仮眠が為のテントを背に、火守を務めているのは蒼の物書き。
本来こういった役目は戦闘向きの英霊が担うべきではあるが、普段それをこなす彼らに代わり、こうして筆を執り、書を物語へとしたためながら夜を明かすのが日常となっていた。

ああでもない、こうでもない。
「それがそれである」と固定化し、軌跡を辿り、その貌を、命を留める。
読者が己に化した呪いだが、皮肉にも泉が如く絶えぬこの魔力で、必死に。命を賭けて編み重ねていく。

「―――宝具か。毎晩毎晩、飽きぬものよ」

ぷつん、と集中の途切れた音。伝えてあるが故に誰一人立ち入らぬ寂れた書斎に、虫が迷い込んだかと息を吐いた。
邪魔だ、と呟く労力も惜しい。だというのに奴は向かい合うようにして手前に腰を下ろす。その殊勝さはこと珍しい光景ではあったが、優先順位、とはあるものだ。苛立ちを隠すことなくようやっと吐き捨てた。

「分かっているのなら即刻立ち去れKYめ。如何に賢王サマと言えど我が最大の仕事を邪魔すると言うのならあり余る暴言を引き出してやるぞ」

普段なら舌を切られてもおかしくはない言葉。しかし相手はさぞ機嫌が良いのか、まるで聞いていないように笑い飛ばしてしまう。
聞えるように改めて舌打ちをしながら、用が無いのならば無視だと再び本へと視線を移した。

「続けよ。死相を抱える雑種の延命なのだろう？妨げるつもりはないが…そうさな。……我も読者に数えられねば気が済まぬ、と告げてみるか」

語り掛けてくるその行為が妨げだと気付かんか独尊め。そう内心独りごちては見るが、言葉のひとつひとつには己の顔を上げるに充分な引力があった。
何を返す訳でもなく、その蛇眼を見上げて真意を探る。だが…恐らくそれが興味本位や暇潰し…と言った類でないことを色で知る。

「…驚いたな、あの暴君もそんな目をするとは。さすがに年の功と敬うべきか？」
「たわけ」