機縁 ページ9
ガシャン!という大きな音で目が覚めた。
時計は16時すぎを指している。昨日少し夜更かししてしまったせいか、どうやら読書中に寝落ちたらしい。
音の出所はおそらく二階。寝てる間に係の人が来ていたのだろうか。食事時ではないのに、何の用だろう。
気になるところだが、今見に行くと鉢合いかねない。後で見ておこう……なんて思っていると、今度はパリン、と割れるような音がした。……窓割られてないか?
息を潜め耳をそばたてる。足音が階段の方へ向かっている。
多分、係の人じゃない。彼らは今までずっと部屋に食事を運ぶだけで、それ以上僕に関わろうとはしてこなかったし、二階に上がる理由も無い。
そもそも玄関で履物を脱いで上がったなら、足音はもっと小さい。だったらおそらく、外からの侵入者。
こんなの初めてだ。もしかしたら誰かが僕を助けに……今更?まさか、そんなわけない。
じゃあ何だ。五条家に出来損ないがいることに気付いた刺客?この歳まで生かしたけど、やっぱりいらないと判断した本家?
見に行くべきか、隠れるべきか。他人に姿を見せるなと言われてきたけど、確かめに行くぐらいならいいかもしれない。
いやでも相手が武器とか持ってたらどうしよう。僕に応戦なんて出来るはずもないし、見つかったらこの離れに逃げ場はないし……
そんなことを考えている間にも、階段を降りたらしい足音は、廊下をまっすぐここへ向かってくる。
ここには武器になるようなものも隠れられる場所もない。せめてもと、手近な雑誌を丸めて構えてはみるものの、あまりに頼りない。
僕はどうすることも出来ない。今まで通り大人しく、なるようになるしか。
足音が戸の前でぴたりと止む。
僕は思わず息を止めて、一体誰がと戸を見つめる。
一瞬間をおいて___僕にとっては随分長い一瞬だった___からりと音を立てて戸が引かれた。
時が止まったかのようだった。僕も相手も、きっと同じような表情をしていた。
同じくらいの背丈。模様入りのきれいな白い着物。白くてフワフワの髪が、いつかのように揺れる。
キラキラした六眼をまんまるに見開いた弟が、廊下に立ち尽くしていた。
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梅チョコ(プロフ) - Part1完結しました!ありがとうございました(* ´ ▽ ` *)続編もよろしくお願いします〜! (2021年3月27日 18時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
梅チョコ(元Thatn)(プロフ) - ヒエッ……待って……書きかけのお話を非表示でこそっと更新したつもりだったのに出てた……(´;ω;`) (2021年2月12日 20時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - トップにそれっぽいこと書いてる癖に、未だ男主くんの術式が出てこないという……ね……あと変な時間の更新多い……( ̄▽ ̄;) (2021年2月2日 13時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - 蒼音さん» すみません!ボード見てなくて気付きませんでした……。私もボードの方に返信させて頂きました。長文ですが一読頂ければと思います。これからはボードの方もちゃんと確認します! (2021年1月31日 8時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
蒼音(プロフ) - 読まれていない可能性があったので一応、報告を。コメント欄に入りきらなかったので、作者様のボードの方にて意見を書かせて頂きました。方針が決まったのであれば不要な意見になるかもしれませんが・・・。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: 70bc04b5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅チョコ | 作成日時:2021年1月26日 0時