切望 ページ8
次の日小窓を見に行くと、もう新しい木の板が打ち付けられていた。
やっぱり弟に見られていたんだ。それが双子の兄だとは思っていなくても、誰かがここに住んでるって気付いて、大人に問いただしたに違いない。
そして昨日の夜のうちに、僕らを会わせたくない大人がさっさと塞いでしまったんだろう。
離れの端から端まで見て回ったが、古くなっていた窓板は全部一新されていて、あれから3年、僕が再び外を見ることは叶っていない。
部屋のすりガラスから見えるのは、外が明るいか暗いか、空がなんとなく青いか赤いか黒いかで、それだけじゃ見たこともない外の景色をイメージするのは難しかった。
今でも僕は、叶うなら弟に会いたい。でも会うのが怖い。
僕のことなんて知らないままで、弟には幸せに暮らしていて欲しい。僕に気付いて、僕を助け出して欲しい。
弟に会ってしまった時、自分の中で渦巻くこの正反対の気持ちがどうなってしまうのかが分からない。
仕方ないことだというのは分かっている。
呪術界の御三家と言われるこの家に生まれてしまった以上は、才能の有る弟が優遇され、才能の無い自分が冷遇されるのは当然だと、そう納得したフリをしている。
本来ならすぐに殺されるはずだった僕がこうして生きていられるだけでも感謝しないといけないと、諦めたフリをしている。
蓋をして忘れようとしたあの感情は、ふとした瞬間にも首をもたげて、僕の心を締め上げてくる。
独りで食事をしている時、鍵が閉まるのを聞く時、板の打ち付けられた窓を見る時。
どうして弟だけ。どうして僕だけ。こんなの不平等だ、こんなの理不尽だ。
だって僕らは双子で、唯一の肉親なのに。
でも一番嫌なのは、その唯一の肉親の幸せすら心から願ってやれない自分だ。
あの、全てを見透かすような、綺麗な水色したキラキラの瞳。
五条家に伝わる特異体質。無下限術式を扱うのに不可欠な、相手の術式の情報を視認出来るという“六眼”。
叶うならもう一度、今度は近くで見せて欲しい。
叶うならもう一度……
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梅チョコ(プロフ) - Part1完結しました!ありがとうございました(* ´ ▽ ` *)続編もよろしくお願いします〜! (2021年3月27日 18時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
梅チョコ(元Thatn)(プロフ) - ヒエッ……待って……書きかけのお話を非表示でこそっと更新したつもりだったのに出てた……(´;ω;`) (2021年2月12日 20時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - トップにそれっぽいこと書いてる癖に、未だ男主くんの術式が出てこないという……ね……あと変な時間の更新多い……( ̄▽ ̄;) (2021年2月2日 13時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - 蒼音さん» すみません!ボード見てなくて気付きませんでした……。私もボードの方に返信させて頂きました。長文ですが一読頂ければと思います。これからはボードの方もちゃんと確認します! (2021年1月31日 8時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
蒼音(プロフ) - 読まれていない可能性があったので一応、報告を。コメント欄に入りきらなかったので、作者様のボードの方にて意見を書かせて頂きました。方針が決まったのであれば不要な意見になるかもしれませんが・・・。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: 70bc04b5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅チョコ | 作成日時:2021年1月26日 0時