瞥見 ページ7
僕は冷たい窓に額がくっつくぐらい顔を近付けて、食い入るように窓の外を見続けた。
息が窓を白く曇らせるのを、袖で拭ってはまた覗いて、曇って、また拭って……
そして僕は、弟を見た。
一目見て解った。どうしてあの時あんな場所に居たのかは未だに知ることは出来ないけど、それは紛れもなく、会いたい会いたいと思っていた双子の片割れだった。
きれいな白い着物を着て、水溜まりを踏みながら歩いていた。
彼がぴょこんと一歩踏み出すごとに、僕と同じ白くてフワフワした髪が風に揺らぐ。
弟を一目見ることが出来て、とても嬉しかった。元気そうで良かったと、心から安心した。
それなのに、ふいに僕の胸に湧き上がったのは、どんよりとした暗い気持ちだった。この離れに籠る空気みたいな、淀んで濁った重苦しいヤツ。
___弟は外で遊べるのに、どうして僕は外に出ちゃいけないんだろう。
羨ましい、ずるい、寂しい……双子で生まれてきたのに……
突然、パッと顔を上げて弟がこっちを見た。
目が合った、と思った瞬間、僕は咄嗟に一歩後退っていた。
そのまま逃げるように部屋に戻って、膝を抱えて踞っていた。バクバクと速くなる心臓の音が、どうか外へ聞こえませんように、と願った。
その咄嗟の行動の理由は、弟に会ってはいけませんと言われ続けてきたからだけじゃなかったと思う。
あの時の僕は、この暗い気持ちを弟に悟られたんじゃないかという恐怖に支配されていた。
羨ましいとかずるいとか、あまつさえ「双子なのにどうして僕なんだ」なんてどうしようもないこと、きっと持ってはいけない気持ちだったのに。
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梅チョコ(プロフ) - Part1完結しました!ありがとうございました(* ´ ▽ ` *)続編もよろしくお願いします〜! (2021年3月27日 18時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
梅チョコ(元Thatn)(プロフ) - ヒエッ……待って……書きかけのお話を非表示でこそっと更新したつもりだったのに出てた……(´;ω;`) (2021年2月12日 20時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - トップにそれっぽいこと書いてる癖に、未だ男主くんの術式が出てこないという……ね……あと変な時間の更新多い……( ̄▽ ̄;) (2021年2月2日 13時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - 蒼音さん» すみません!ボード見てなくて気付きませんでした……。私もボードの方に返信させて頂きました。長文ですが一読頂ければと思います。これからはボードの方もちゃんと確認します! (2021年1月31日 8時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
蒼音(プロフ) - 読まれていない可能性があったので一応、報告を。コメント欄に入りきらなかったので、作者様のボードの方にて意見を書かせて頂きました。方針が決まったのであれば不要な意見になるかもしれませんが・・・。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: 70bc04b5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅チョコ | 作成日時:2021年1月26日 0時