【呪術廻戦】いつかここから連れ出して【五条悟】

本能 ページ33

感じたのは、恐怖。またあれが来る、痛いのは嫌だという見えない攻撃への恐怖、急変してしまった悟への恐怖。

そして悲しみ。なんで、どうして。裏切られたと、そう思った。
僕が何も出来ないから？上手くいかないから？悟が思ってたよりも僕が弱いから？

じゃあ今までの優しい言葉は嘘だったのか。
一緒にこの家を出ようと言ってくれたのは気まぐれで、裏では僕を嘲笑っていたのか。



A「ぁ、」



醜くどす黒い血反吐のようなものを軋んだ心がどろりと吐いた。絶望感に目の前が真っ暗になる。

悟がピンと指を弾くのがスローモーションになって、力の塊が撃ち出されるのをはっきりと視認する。
次の瞬間、頭を庇っていた腕に命中したそれが弾けた。



凪いだ水面にぽたりと滴が落ちた。
並々と湛えられた無色透明にたった一滴垂らされた絵の具は、ゆらりとその色を綻ばせた後、やがて溶けて消えて元の無色透明になる。



A「ッぁあああああああ！」



流れ込んだ異色の力が体内でぐるぐると渦巻いて、自らと溶け合う。
やがて逆再生したかのようにそれが腕の一点へ集中し、受けた時と同じように打ち返される。

この間、僅か1秒にも満たず。



悟「……！！」



真っ直ぐ悟の顔目掛けて飛び出した力の塊は、彼の張った無下限に弾かれて散ったものの、それで十分だった。

予想だにしない反撃に、悟は目を見開く。
そのままズンズンと近寄ってくるのを、僕は恐怖に震えて待つことしか出来ない。
されるがままに腕を引かれて立たされる。ぎゅっと目を瞑った僕の手を掴んで悟が言った。

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