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[追想] ページ14

[悟side]



7才の冬だった。その頃の俺は術式を自覚したばかりで、ウン百年ぶりの六眼と無下限呪術の抱き合わせに家は騒然としていた。

あっという間に俺は次期当主候補に祭り上げられ、大人たちの世界では派閥戦争と暗殺未遂と破門騒動とが起こった。



俺はというと、朝は日も昇らないうちから起きて、片っ端から知識を詰め込み、量も難易度も突然増した特訓に疲れ果て、夜は泥のように眠る日々。

ある日とうとう耐えきれなくなって、特訓の時間に逃げ出した。



離れのことは前から気になっていた。思い立って来てみれば、重々しい扉には大層な鍵が付けられ、全ての窓は板で塞がれているといういかにもな様子。の割に、見張りは一人もいない。



悟様、と自分を探しているお付きの声が聞こえた気がして、そそくさと離れの裏に回った。

いくら五条家の敷地が広くても、本気で探されれば見つかるのは時間の問題だ。例え上手く逃げ仰せたとしても、どうせ他に帰る場所なんてないのだから、夜には本邸に戻るしかない。
どちらにせよ叱責を受けるのは目に見えていたが、すぐ戻るのも負けたような気がして癪だった。
少しでも時間を稼げたらと思って離れの裏の林に入ったが、すぐに後悔した。



数日降り続いた雨のせいで地面は所々ぬかるみ、雨上がり特有の草木の匂いが濃く立ち込めていた。
背の高い草が着物の裾を濡らして、こうなったらとことん困らせてやろうと、泥が跳ねるのも気にせず水溜まりを踏んで歩いていた時だった。ふいに予感がして顔を上げたのは。



離れの2階、忘れられたような小窓に白い人影を見た。

あまりに一瞬のことで見間違いかと思ったが、板が外れて剥き出しになった窓ガラスの下半分はまだ曇ったままで、たった今誰かが立ち去ったことを示していた。



いてもたってもいられなくなった俺は本邸に戻って問いただしたが、答えは得られなかった。
当然めちゃくちゃ怒られたし夕飯も抜かれたけど、説教も空腹も気にならないほど、俺の頭の中は離れのことでいっぱいだった。



繰り返しの毎日、苦しいだけの訓練に目標が出来た。
いつかあの離れを暴いてやる。何があるのか誰が住んでるのか、この目で確かめてやる。

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設定タグ:呪術廻戦 , 男主 , 五条悟   
作品ジャンル:アニメ
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梅チョコ(プロフ) - Part1完結しました!ありがとうございました(* ´ ▽ ` *)続編もよろしくお願いします〜! (2021年3月27日 18時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
梅チョコ(元Thatn)(プロフ) - ヒエッ……待って……書きかけのお話を非表示でこそっと更新したつもりだったのに出てた……(´;ω;`) (2021年2月12日 20時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - トップにそれっぽいこと書いてる癖に、未だ男主くんの術式が出てこないという……ね……あと変な時間の更新多い……( ̄▽ ̄;) (2021年2月2日 13時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
Thatn(プロフ) - 蒼音さん» すみません!ボード見てなくて気付きませんでした……。私もボードの方に返信させて頂きました。長文ですが一読頂ければと思います。これからはボードの方もちゃんと確認します! (2021年1月31日 8時) (レス) id: 89e33c10ef (このIDを非表示/違反報告)
蒼音(プロフ) - 読まれていない可能性があったので一応、報告を。コメント欄に入りきらなかったので、作者様のボードの方にて意見を書かせて頂きました。方針が決まったのであれば不要な意見になるかもしれませんが・・・。 (2021年1月31日 2時) (レス) id: 70bc04b5ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梅チョコ | 作成日時:2021年1月26日 0時

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