49話 ページ5
VIPルームに行く途中、サバナクローの寮長とすれ違った。
その時、この人が何故ここにいるのか気づいていれば……。
『アズールくん！厨房の食材が……って……どうしたの。』
VIPルームに着くと扉が開いていて、中にいたアズールくんに声をかけると、真っ青な顔をしてこちらを振り返った。
｢契約書が！！持ち出されましたっ！！！！｣
『！？……もしかして、さっきの…』
｢A、追いかけます！来てください！｣
『わかった。』
酷く焦ったアズールくんと共に、サバナクローの寮長を追いかける。
何かあった時の為に、ユニーク魔法クロス･リンク｢意識変換｣を使った。
身体が更に重くなったことも、そんなことはどうでもよかった。
外に出ると、サバナクローの寮長とその子分みたいな人が黄金の契約書を手に持っていた。
｢待ちなさい！｣
｢……おっと、もうおでましか。それ以上こっちに近づくなよ、契約書がどうなっても知らないぜ。｣
今すぐに取り返そうとしたが、どう考えてもこちらが不利な状況……
下手に手出しはできねぇ……
｢か、返してください……それを返してください！｣
｢おいおい、少しは取り繕えよ。おすましごっこはもうやめたのか？その慌てぶりを見るに、アイツの予想は当たってたらしいな。｣
｢なん……だって？｣
『どういうこと？』
｢監督生が、お前の契約書は金庫の中以外であれば、破ることができるんじゃねえかとな。｣
『監督生が……！？』
やっぱり……。
監督生はもっと早く注意しておくべきだったんだ……
｢なぜだ、なぜアイツは僕の邪魔ばかりしてくる！？イソギンチャクから解放したってアイツにはなんの得ももないだろう！？｣
｢それについては、俺も同意だな。……そこでだ。なあアズール、俺と取引しようぜ。｣
｢……は？｣
｢この契約書をお前に返したらお前は俺になにを差し出す？｣
アズールとの取引……だが……
確実にアズールが不利だ。
だけど、あの契約書達を返してもらうには、これしかない……
｢な、なんでもします。テストの対策ノートでも卒業論文の代筆でも、出席日数の水増しでも、なんでもあなたの願いを叶えます！｣
｢なるほど、実に魅力的な申し出だ。｣
｢なら……｣
俺も何故か、返してもらえると期待したんだ。
それが間違いだった。
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雪狐 - 一気読みしてしまいました！とても面白かったです。完結おめでとうございます。 (2020年9月24日 18時) (
レス) id: efc5c7c00a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨鯱 | 作成日時：2020年9月17日 0時
