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松田君は私をベッドの淵に座らせると、その隣に自分も腰を下ろして「あー」と声を漏らす。
悩んでいるのか戸惑っているのか。Playをする時は黙っている癖がついてしまって、聞こうにも上手く聞けない。

そうこうしているうちに、彼の視線がこちらを向いた。








「まずはSafe word決めねぇとな。何が良い?過去に使ったことあるやつでも好きな言葉でもなんでも良いぞ。咄嗟に言うやつだから、言いやすいやつ選べ」

「……えっ」

「いや、“え”じゃねぇよ。一回くらい決めたことあるだろ、Safe word。…………まさかお前、今までDom側に決めさせてたのか?」

「う、うん。……Safe wordって、そういうものじゃないの?」








基本的には無理矢理だったから、Safe wordは決められないことが大半だった。
けれど偶に“こう言ったら止めるよ”と言ってくる人も居て、だから、Safe wordは本来そうやって決めるものだと思っていた。……口にしても、止まってくれる人は一人も居なかったけど。


そのことを話すと、彼の顔は苦虫を噛み潰した後のように苦々しげに歪む。そしてもう一度私の頬に手を添えて、割れ物を扱うように大事に大事に私を見つめてくる。

その表情は、心配しているような、小さな怒りの火を抑えているような、そんな複雑なものだった。







「良いか、桜井。Safe wordっつうのは、お前が自分を守るために必要なもんだ。だから口にするお前が決めるべきだし、Dom側もそれを言われたら即座にPlayを中止しなきゃならない。無理矢理続ける奴は最低だ。つまり今までお前とPlayしてきた男は全員最低だ。覚えとけ」







無理矢理続ける奴は最低。誰かにハッキリとそう言われたのは、これが初めてだ。
……今まではずっと、“Subなのだから仕方ない”の一言で片付けられてきたから。

Safe wordだって所詮、形式上存在するだけのものだと思っていた。







「……じゃあ、松田君は、言ったらやめてくれるの?絶対?」

「当たり前だ。言ったろ。お前の嫌がることは絶対しねぇよ」







彼の笑みに少しだけ緊張がほぐれて「じゃあ、“終わり”にする、Safe word」と言えば、松田君は「“終わり”だな、分かった。ちゃんとSafe word決められて偉いぜ、桜井」と微笑んで頭を撫でてくる。

……また、あの感覚がする。頭の芯から揺さぶられるような、体全体が彼の言葉を待っているような、Subとしての本能が引き出される感覚。
その熱を求めて彼の手に擦り寄って行くと、私を見守る瞳が微かに揺らいだ。







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ひなのすけ(プロフ) - やばいほんと好きです、、気長に更新待ってます! (4月21日 17時) (レス) id: 77329d1be9 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレートモカ - 続き見たいです!頑張ってください!! (10月21日 11時) (レス) id: b98da95df9 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 続き、気になってます!更新頑張ってください✨ (2023年2月23日 19時) (レス) @page17 id: 7d91e777e9 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 続き待ってます!!応援してます!! (2022年10月6日 1時) (レス) @page17 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
Aly - 初めまして!本当に素敵な作品で、続きを楽しみにしています! (2022年7月6日 23時) (レス) @page17 id: 7c21e5a931 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作成日時:2022年6月4日 8時

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