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今まで出会ってきた人の中で、私は彼らを一番信頼している。
でなければ、今頃はもうSub dropして気を失っているところだろう。
彼らなら大丈夫だという信頼があるから、今もまだ、なんとか意識を保てているんだ。
彼らを信じているから、私は、まだ立っていられるんだ。
……あぁ、でも、どうしよう。
流石にもう、限界が、近い。
「ッ、”何とか言えよ”、桜井!!」
彼の“言え”という言葉が、脳内で無意識に
だが胸ぐらを掴まれていることもあり、咄嗟に声を出すことが出来なくて、私は意図せず彼の命令に背く形となってしまった。
Subの私が、Domの言うことに、逆らった。
その事実が自分の胸に重たくのし掛かった刹那___私の中に張り詰めていた糸が、プツリと、微かな音を立てて途切れた。
……理性を保っていることすら、本当はギリギリだったんだ。
それこそ脆い釣り橋の上に蹲っているようなもので、彼らに対する信頼が少しでも無ければ、いつ足場が崩れて落下しても可笑しくない状況だった。
そんな状態での彼の言葉は、あまりにも的確に、私の弱い部分を突き刺して。
______私の恐怖と不安は、完全にキャパオーバーした。
胸ぐらを掴む彼の両手を必死に掴んで、はくはくと口を動かす。
気づけば箍が外れたように、私は泣き出していた。
その瞬間、喉元を締め付けていた圧迫感が、少しだけ緩まって。
喉元で堰き止められていた言葉が、雪崩のように押し寄せる。
「ごめ、なさっ、わた、わたし、いうこと、きけなくて、ごめんなさ、いっ、ゆるして、ゆるして、ごめんなさい、わるいこで、ゆるして、ごめんなさい、ごめんなさい、なぐらないで、おこらないで、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ」
「ッ松田!!今すぐ桜井から離れろ!!」
班長の声が医務室に弾けた途端、胸ぐらを掴み上げていた松田君の手がするりと離れていく。
支えを失った体はぺたりと床に座り込んで、私は咄嗟に、自分を守るようにして両腕を抱きしめた。
ごめんなさい、ごめんなさい、悪い子でごめんなさい、もう間違わないから、次からはちゃんと上手くやるから、お願い見捨てないで、殴らないで、お願い、ごめんなさい。
蹲る私の側に駆け寄ってきた班長がなんとかCareしてくれようとするが、彼の声が上手く耳に入ってこない。
代わりに、怯えて丸くなる私の頭上からは、呆気に取られた松田君の声が聞こえてきた。
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ひなのすけ(プロフ) - やばいほんと好きです、、気長に更新待ってます! (4月21日 17時) (レス) id: 77329d1be9 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレートモカ - 続き見たいです!頑張ってください!! (10月21日 11時) (レス) id: b98da95df9 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 続き、気になってます!更新頑張ってください✨ (2023年2月23日 19時) (レス) @page17 id: 7d91e777e9 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 続き待ってます!!応援してます!! (2022年10月6日 1時) (レス) @page17 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
Aly - 初めまして!本当に素敵な作品で、続きを楽しみにしています! (2022年7月6日 23時) (レス) @page17 id: 7c21e5a931 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2022年6月4日 8時