検索窓
今日:85 hit、昨日:80 hit、合計:130,367 hit

05 ページ6









今まで出会ってきた人の中で、私は彼らを一番信頼している。

でなければ、今頃はもうSub dropして気を失っているところだろう。
彼らなら大丈夫だという信頼があるから、今もまだ、なんとか意識を保てているんだ。

彼らを信じているから、私は、まだ立っていられるんだ。






……あぁ、でも、どうしよう。


流石にもう、限界が、近い。








「ッ、”何とか言えよ”、桜井!!」








彼の“言え”という言葉が、脳内で無意識にCommand(命令)として処理される。
だが胸ぐらを掴まれていることもあり、咄嗟に声を出すことが出来なくて、私は意図せず彼の命令に背く形となってしまった。






Subの私が、Domの言うことに、逆らった。






その事実が自分の胸に重たくのし掛かった刹那___私の中に張り詰めていた糸が、プツリと、微かな音を立てて途切れた。


……理性を保っていることすら、本当はギリギリだったんだ。
それこそ脆い釣り橋の上に蹲っているようなもので、彼らに対する信頼が少しでも無ければ、いつ足場が崩れて落下しても可笑しくない状況だった。


そんな状態での彼の言葉は、あまりにも的確に、私の弱い部分を突き刺して。








______私の恐怖と不安は、完全にキャパオーバーした。








胸ぐらを掴む彼の両手を必死に掴んで、はくはくと口を動かす。

気づけば箍が外れたように、私は泣き出していた。


その瞬間、喉元を締め付けていた圧迫感が、少しだけ緩まって。
喉元で堰き止められていた言葉が、雪崩のように押し寄せる。







「ごめ、なさっ、わた、わたし、いうこと、きけなくて、ごめんなさ、いっ、ゆるして、ゆるして、ごめんなさい、わるいこで、ゆるして、ごめんなさい、ごめんなさい、なぐらないで、おこらないで、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ」



「ッ松田!!今すぐ桜井から離れろ!!」







班長の声が医務室に弾けた途端、胸ぐらを掴み上げていた松田君の手がするりと離れていく。
支えを失った体はぺたりと床に座り込んで、私は咄嗟に、自分を守るようにして両腕を抱きしめた。




ごめんなさい、ごめんなさい、悪い子でごめんなさい、もう間違わないから、次からはちゃんと上手くやるから、お願い見捨てないで、殴らないで、お願い、ごめんなさい。




蹲る私の側に駆け寄ってきた班長がなんとかCareしてくれようとするが、彼の声が上手く耳に入ってこない。

代わりに、怯えて丸くなる私の頭上からは、呆気に取られた松田君の声が聞こえてきた。







06→←04



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (538 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1644人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ひなのすけ(プロフ) - やばいほんと好きです、、気長に更新待ってます! (4月21日 17時) (レス) id: 77329d1be9 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレートモカ - 続き見たいです!頑張ってください!! (10月21日 11時) (レス) id: b98da95df9 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 続き、気になってます!更新頑張ってください✨ (2023年2月23日 19時) (レス) @page17 id: 7d91e777e9 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 続き待ってます!!応援してます!! (2022年10月6日 1時) (レス) @page17 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
Aly - 初めまして!本当に素敵な作品で、続きを楽しみにしています! (2022年7月6日 23時) (レス) @page17 id: 7c21e5a931 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:無糖 | 作成日時:2022年6月4日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。