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視界がぼやける程の距離で、微かに掠れた声が鼓膜を揺らす。








「……さっき、お前がちゃんとSafe wordを言ってくれて、嬉しかった。前に怖がらせた俺のことも、お前は最後まで信じてくれたのかって、……すげぇ、安心した。ありがとな、A」








その甘い響きを孕んだ言葉を最後に、松田君との初めてのPlayは、彼の優しさに包まれて終わりを迎えた。








______殆ど怖いことはなかったPlayの後、暫くは彼にAfter careされる時間が続いた。
よしよしと頭を撫でられたり、大丈夫だと背中を撫でられたり、震える手を握ってもらったり。


そうして漸く、身体的にも精神的にも、当初の落ち着きを取り戻した。
体の震えも収まり、恐怖に染まっていた思考は、今は少しだけふわふわとしている。



その事をしっかりと確認してから、隣り合わせで座る私の横で、松田君は緊張の糸が切れたように仰向けでベッドに倒れ込んだ。

細かいところにまでかなり気を遣ってくれていたから、慣れているのかと思っていたけれど、この様子を見るとそうでもないらしい。








「マジでビビった」








目元を腕で覆いながら、松田君は心底安心した声でそう言った。

ビビったとは言っているものの、初めて彼らの前でSub dropに陥った時も、そして今回も、彼の対応は迅速かつ的確だった。
あんなにも丁寧な対応をされたことがないから、そう感じているだけなのかもしれないけれど。




でも普段の彼の姿を見ていると、相手を褒めまくって全肯定するなんて「俺のキャラじゃない」と抵抗感を露わにしそうなものなのに、Play中の彼は全くそんな様子を見せなかった。

寧ろ、私を見下ろす瞳は、常に愛おしいものに向けるそれで。



だから、私も彼の言葉に込められている感情を信じる事ができた。あぁ、この人は今、本当に嬉しいと思ってくれているんだ、と。
そして柄にもなく、……それを“幸せだ”と思った。








「そんな風には、全然見えなかったけど……」

「あのな、んなもん馬鹿正直に表に出すわけねぇだろ。コントロール権預けてる奴がビビったら、お前を余計パニックに陥らせるだけだろうが」








そこまで考えて、彼は至極冷静である風を装ってくれたのか。
その内側では、安心で声が震えるほど緊張していたというのに。


彼の底なしの優しさに「ありがとう」と溢すと、不満そうに「うるせぇ」と返される。
今までなら額面通りに受け取っていたその言葉も、髪の隙間から覗く耳の赤さを見れば照れ隠しだとすぐに分かった。








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ひなのすけ(プロフ) - やばいほんと好きです、、気長に更新待ってます! (4月21日 17時) (レス) id: 77329d1be9 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレートモカ - 続き見たいです!頑張ってください!! (10月21日 11時) (レス) id: b98da95df9 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 続き、気になってます!更新頑張ってください✨ (2023年2月23日 19時) (レス) @page17 id: 7d91e777e9 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 続き待ってます!!応援してます!! (2022年10月6日 1時) (レス) @page17 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
Aly - 初めまして!本当に素敵な作品で、続きを楽しみにしています! (2022年7月6日 23時) (レス) @page17 id: 7c21e5a931 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作成日時:2022年6月4日 8時

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