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「なら今度は、桜井の嫌なことを教えてくれるか」

「嫌な、こと」

「例えばだな、このCommandは使わないでくれとか、こんなことはされたくないとか」


「…………なら、痛いことは、しないでほしい……お仕置きも、怖いから嫌……あと、それと……」

「…………どした?」







言うの難しいか、と私を怖がらせないように柔らかい口調で聞いてくる松田君。
きっと彼がここで“Say(言って)”などのCommandを使わないのは、ちゃんと全てを決めてから先に進もうとしてくれているから。

そんな彼の気遣いを無駄には出来なくて、私も恐る恐る口を開く。







「……あと、“Strip(脱げ)”とか、“Lick(舐めろ)”も、いや。性的なCommandは、使わないで、ほしい……」

「あぁ、分かった。ちゃんと正直に言えて偉いな。教えてくれてありがとう、嬉しいよ」








ただ聞かれたことに答えているだけなのに、彼はその目を優しく細めて、沢山私を褒めてくれる。
その声と体温が、泣きそうになるほど暖かい。


今までこんなことは一度も無かった。
少しでも口ごたえをしたら“Shut up(うるさい)”と言われ、怯えながら相手の機嫌と顔色を伺い続けて、拒絶する頭とは裏腹にDomの命令に従い続ける自分の体とのギャップが苦しかった。

こんなにもちゃんと心と体が一緒に着いてきている感覚は、Domの人相手には初めてだった。




それから彼は私が好きなことの確認もしてくれて、前みたいに名前で呼ばれるのが好きだと言うと、すぐに桜井からAに変えてくれた。
撫でられるのが好きだと言うと、「こうか?」と言いながら両手を使って目一杯頭を撫で回してくれた。


高校の時以来のPlayに対する恐怖が、彼のお陰で少しずつ、けれど確実に薄れていくのが自分でも分かる。
彼の紡ぐ言葉や温もりは、まるで魔法みたいだ。








「A。俺は今から、お前に軽めのCommandを言っていく。もし怖いとか嫌だって思ったら、すぐにでもSafe wordを叫べ。良いな。約束だ」

「……うん」








きっと彼はここまでの流れの中で、私がPlay自体にトラウマを抱いていることを見抜いている。
だからこんなにもゆっくりと事を進めてくれるし、焦らせるようなことは一つも言わない。


彼が常にCareを忘れず行ってくれているからか、この人なら大丈夫だ、Safe wordを言えばきっと止めてくれる、という思いが私の中に宿り始める。これが信頼関係、というやつなのだろうか。

全然、怖くない。







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ひなのすけ(プロフ) - やばいほんと好きです、、気長に更新待ってます! (4月21日 17時) (レス) id: 77329d1be9 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレートモカ - 続き見たいです!頑張ってください!! (10月21日 11時) (レス) id: b98da95df9 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 続き、気になってます!更新頑張ってください✨ (2023年2月23日 19時) (レス) @page17 id: 7d91e777e9 (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 続き待ってます!!応援してます!! (2022年10月6日 1時) (レス) @page17 id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
Aly - 初めまして!本当に素敵な作品で、続きを楽しみにしています! (2022年7月6日 23時) (レス) @page17 id: 7c21e5a931 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作成日時:2022年6月4日 8時

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