嫌い 9 ページ9
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思ってもいない、言葉が出た。
だけど、オレの口は止まらない。
「お前の所為だ!!
お前がッ、咲希と遊びたいなんて言うから!!」
Aはびくりと肩を揺らして、小さく顔を振る。
『違ッ……! 私は、ただ…
咲希ちゃんに楽しい思い出を、作って欲しくて…』
段々弱々しくなる声。
だけど、そんな事は気にせず、彼女に怒声を浴びせた。
「違わないだろう!! 外に行かなければ、
こんな事にはならずに済んだ筈だ…ッ」
オレも最初は外に出る事に賛成した。
だけど、咲希が倒れてしまった事で、
自分を棚に上げてしまう。
「──Aなんて嫌いだ。
もうオレの目の前から消えてくれ!」
『ッ……!!』
「Aちゃん!」
そう叫べば、Aは涙を浮かべながら
病院を飛び出した。
「司!」
「っ!」
「Aちゃんに何て事言ってるの!!」
母さんの声でハッと我に返る。
慌ててAを追いかけようとするが、
脚が動かない。
ただ、その場に立ち尽くす事しか出来なかった。
あれから、一度も姿を見なかった。
学校に行っても、登下校中も、
Aに出会うことは無かった。
とある日。
「司……。
Aちゃん、引っ越したんですって」
「──え?」
突然だった。
Aは何も言わず、引っ越して、
姿を消した。
慌てて自分の部屋へ駆け込み、
隣の家、Aの家を見た。
そこには、いつも見ていたカーテンは無く、
少し見えていた家具も何も無かった。
オレはその場に力なく座り込んだ。
オレの所為だ。
「オレが、オレがAを。」
この街から、追い出したんだ。
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作者名:葉口 | 作成日時:2022年10月2日 21時