社長がお呼びです。

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落ち込んだ顔、見せないようにしなきゃ。


ちょうど電話が鳴って、
席を立てて良かった。




テラス席で携帯をチェックしたら、
電話の相手は、同期の晴子。


「もしもし・・・」


一瞬迷ったんだけど、
やっぱ、このままは良くないと思って、
思い切って、出た。


晴子は何も悪くないのに、
悪いのは前田くんなのに、

私、動転して晴子のこと無視して、
会社も辞めちゃって。

それきりになってたから・・・


「A？今いい？ごめんね」


「大丈夫だよ」


「Aに急に避けられた理由、
やっと分かった。
ごめんね。
私、なんも知らんかって・・・
最近、私も別れてん。
その報告だけやねんけど・・・」


「ううん。
私こそごめん。
急に無視したりして・・・」


アクティブで積極的な晴子には、
到底敵わないって、

根底にあるコンプレックスのせいもあったと思うんだ。


「いいよ。
そりゃあ、無視もしたくなるって。
出来たら理由教えてもらえたら、
もうちょっと早くあの最低男と別れられたけど」


晴子があっけらかんと笑ってる。


「そうだよね。ごめん・・・」


「もう済んだ事やし。
ええよええよ。
今の職場どう？
楽しい？」


「うん、まあ・・・」


「いい人おる？
って、お互い、もう社内恋愛はこりごりやんなあ」


そう、そのはず。


「そうだよ。
もう社内の人はありえない」


なのに・・・


安田社長がタバコ吸いに、
外に出て来て、
少し離れたところで、火をつけてるのが、
目に入って。


その仕草にドキッとなってる私は大バカものだ。


少し近況を話した後。


「また友達に戻れるかな。
昔みたいに買い物でも行かへん？」


晴子の遠慮がちな声に、


「うん、もちろん。
また会おうよ。
連絡するね」


そう答えて、電話を切った。

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