社長がお呼びです。

３７ ページ37

動くのはやめよう。


みんなが降りて来てくれるまで、
デスクの下に隠れてよう。


もう一度、自分のデスクに潜り込む。


自然と、安田社長の顔が浮かんだ。


そばにいて欲しい。


今頃、麻美さんは社長に甘えてるんだろうな。


不安に押しつぶされそうになった時。


「Aちゃん！どこ？」


安田社長が私を呼ぶ声が聞こえてきた。


探しに来てくれたんだ・・・


「ここです。
自分のデスクにいます」


出来る限りのおっきな声で答える。


安田社長が息切らして駆けて来てくれた。


目の前まで来て、
椅子を引いて、
しゃがみこむ。


うずくまったまんまの私を見て。


「良かった・・・
ほんま心配した」


ほっとした顔で呟いて、
それから、
ふわって抱きしめてくれた。


デスクの下だから、
狭くて、
すごく安田社長を近くに感じてる。


「ごめなさい。
勝手なことして・・・」


「ほんまやで。
心配でどうにかなりそうやった。
一人で怖かったやろ？」


「怖かった。
安田社長のこと待ってました」


いつもと違って、素直になれる。


静まり返った真っ暗闇のこの世界に、
たった二人だけの気がして・・・


「もう大丈夫や」


また少し揺れて、
安田社長に抱きつく。


ずっとこうしていたい。

私だけの社長でいて欲しい。


心の奥底にある、
本当の気持ち、言ってもいいかな。


わがままで意地悪で、
最低な人だって、
誰かに罵られても・・・


「社長、
・・・ずっと、そばにいてくれますか。
地震が、停電が終わってもずっと」

３８→←３６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す