社長がお呼びです。

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「あれ、お二人さん、今帰り？」


麻美さんが嬉しそうに話しかけてきた。


「はい、ご飯食べてたんで、
ちょっと遅くなりました」


神山くんが愛想良く答えた。


「私たちも。
すっごく美味しいお店、見つけてん。
絶対にオススメ」


麻美さんはいつも、すっごく楽しそうに話す。

見習わなきゃいけないと思う。


そばにいると、
自分のダメなところばかりが目について、
落ち込む。


「じゃあ、失礼します。
行こ、神山くん」


逃げたい。

嫉妬で醜い顔してるだろう、自分から・・・


気付いたら、
神山くんの手を掴んで、
駆け出してた。


現実から目を背けたかった。



角まで来て振り返ったら、
麻美さんが安田社長の手を引いて、
マンションのエントランス、
くぐるところだった。


社長、何にも言ってくれなかった。


私も、社長の白いジャケットばっかり、
見てて、顔なんて、見られなかった。


あのキスは、気まぐれ？


私のこと、
もう戻れないところまで、
連れさったくせに、
置き去りにして・・・


ひどいよ・・・


「A、大丈夫？」


立ち止まった私を、
神山くんが心配そうに覗き込む。


「ううん。
大丈夫じゃない。
私・・・」


「・・・泣いてもええで」


神山くんの声は優しくて、
ほっとした。


「うん・・・」


うなづいたら、
神山くんが、そっと包み込むように抱きしめてくれた。


ちょっと驚いたけど、
肩におでこくっつける。


顔、見られたくない。


「いっぱい泣き。
俺が泣き止むまで付き合うたるわ。
親友やもん」


「ん、ありがと・・・」

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