社長がお呼びです。

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「丸山先輩に聞いたの？」

「ううん。
すっごい落ち込んだ顔して戻って来た後、
休憩スペースで、
カッコつけてもうた、
アホやった、って、
取り消せるかな、
ブツブツ言いながら、
一人で頭抱えてはんの、
偶然、見ちゃってん」


カッコつけてたなんて、
微塵も感じなかった・・・


「そうなんだ・・・」


「なあ、なんであんな良い人、振ったん？
もったいないやん」


「私もそう思うよ。
でも・・・
キス、出来なかったんだ。
もう他の誰とも出来そうにない」


「その、八方美人社長としか？」


「うん・・・」


たった一度のキスで・・・


私の何もかも、安田社長にさらわれてしまった。


社長こそ、魔性の男だな。


「その社長、そんなにキスが上手いの？」


「分かんない。
一瞬だったし・・・」


身体ごと、溶けるかと思った。

あれから、何度も胸の中で反芻するけど、
どうしても、上手く思い出せないの。


「一回、会ってみたいわ。
その悪い男に」


「悪いのかなあ。
きっと、会ったら、悪そうじゃなくて、
びっくりするよ。
見た感じ、すっごく可愛いから」


「何それ。ますます魔性やん」


「うん。悔しいけど、振り回されてる」


でも、離れようとは思えない。

せめて、そばにいたい。


もし、安田社長が、

私を好き、ってはっきり言葉にしてくれてたら・・・


麻美さんの本音を聞いても、

ひるまなかったかもしれない。


でも、きっと、

そんな自分本位な女、
安田社長は嫌いに決まってるよね。


結局、私は、

優しい人だって、

社長に思われたかっただけなのかもしれない・・・

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