社長がお呼びです。

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安田社長、愕然としてる。


傷付いた顔するなんて、ずるいよ。



「失礼します」



大人のくせに、
男のくせに、

社長のくせに、

今にも泣き出しそうなの。


何もかも振り切るように、
社長に背を向けて、
歩き出した。


角のところまで来て、
うずくまる。


ほんとは、こんなの嫌。


私のことを好きなら、

奪って欲しい。


麻美さんのことなんて、
冷たく追い出してくれたら・・・



社長がそんな非情な人なら、
最初から好きにならない。



「A？！なんでこんなとこにおるねん。
帰ったんちゃうん？」


聞き慣れた神山くんの声がして、

ほっとして、初めて涙がこぼれた。



涙をごしごし拭いて、

顔を上げたら、

傘を私に差しかけて・・・


「コーヒーでも買おっかなって、
コンビニに来てんけど。
Aと一緒なら、
コーヒー屋にしよか」


いつもの優しい笑顔でそう言ってくれた。


神山くんといると楽だ。


同い年で気が合うし、

素の自分でいられる。


今まであんまり男女の友情は信じてなかったけど・・・




いつものコーヒー屋さんで、


神山くん、
何も詮索しないで、
ただ、無駄話して付き合ってくれた。


一人でいたくなかったから、
良かった。




店を出たら雨は上がってて・・・


歩き出した時、電話が鳴った。


丸山先輩からだ。


「出えへんの？」


神山くんに聞かれて、
小さくうなづく。


今は落ち着いて、話せないと思うから。

後から連絡しよう。


だけど、こんなに気持ちが揺れる、
大好きな人がいるのに、
丸山先輩と向き合えるわけないって、思う。


答えはもう出てるの。

ちゃんと断らなきゃ。


「神山くん、
私、永遠に彼氏出来ないかも」


唐突に言った私に、

神山くんが吹き出した。


「何も急いで作らんでもええやん。
そやな。
３０なってもお互い相手おらんかったら、
俺で妥協しとけば？」


冗談なんだろうけど、
ちょっと嬉しかった。


「うん、そうする。
それまではいっか」


このまま安田社長に片想いしてても・・・

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