社長がお呼びです。

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優しい声が聞こえたと思ったら、
ふわって、軽く抱き寄せられた。


どうしよう。

お互い大人なんだし、
これぐらい、当たり前だよね。


頭では分かってるけど、
展開が早過ぎて、
心がついてかない。


困ってたら、
やっと離してくれて、
ほっとしたのもつかの間。

丸山先輩の顔が傾いた。


え・・・


嘘だ。

キス・・・

されちゃう？

それはやだ。


オフィスでの、
安田社長のキスが浮かんで・・・


思わず、顔を背けてた。


私・・・

ひどいこと、しちゃった。


謝らなきゃ、って、思った時、

おでこにちゅ、って短いキスの感覚がした。


「おやすみ。
ゆっくり休んで」


丸山先輩が頭、ぽんってしてくれた。


安心はしたけど、

バーのテラスで、
安田社長にされたみたいに、

胸がきゅうっとは鳴らなかった。


丸山先輩が、階段を駆け下りてく背中を見送りながら、ずっと安田社長のこと、考えてる。


忘れなきゃいけないのに・・・


あんな可愛い奥さんに勝てる気がしないし、

もし私を選んでくれても、

いつもいつもあの奥さんの影に怯えてなきゃいけない。


バツイチの人と付き合ってるなんて、
実家の親が聞いたら、勘当されちゃうかも。


安田社長はきっと、
私のこと、
ちょっとからかっただけ。

自分に気がありありだったから・・・


これからは、
絶対に、顔に出さないようにしよう。


ううん。

嫌いになっちゃえばいい。


嫌いに・・・









翌日。


「なんちゅう、羨ましい」


私の悩みを聞いた晴子の第一声は、これ。


三田のアウトレットで洋服買うはずが、
ずっと、カフェで話し込んじゃってる。


「どこが羨ましいの？」


「羨ましいとこだらけやん。
まず、丸山先輩に言い寄られてる時点で、
めちゃくちゃに勝ち組やろ。
で、その安田社長さんには、
毎日トキメキをもらえてるわけやん？」

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