社長がお呼びです。

１４ ページ14

とにかく仕事に集中しなきゃ。


見積もりと伝票打って、
終わったところに、

安田社長が戻って来た。


その手には、コーヒーショップのカップ。


「Aちゃん、お疲れ様。
はい、どうぞ」


私のデスクに置いたあと、
私の隣、
神山くんの席の回転椅子に座った。


「あ、りがとうございます」


大好きなカフェモカだ。


「好きやろ？それ」


にこにこして、
じっと見てるから、
やりにくい。


「はい、頂きます」


口につけたら、
ふんわりとした甘みが口の中に広がった。


「・・・昨日、ごめんな？
いきなり、前の奥さん現れたりしたら、
びっくりするよな？」


優しい、ご機嫌を伺うような口調。


安田社長って、私の彼氏だった？

私たち、恋人同士なのかな、って、


うっかり勘違いしちゃうような、
そんな話し方。


昨夜は、あんなに楽しそうに、
奥さんと腕組んで歩いてたくせに・・・


「気にしてません・・・」


そう答えるのが、精一杯だった。


「ほんま？
良かった・・・」


ほっとしたように、
ふうって息を吐いて、

また、黙ったまんま、
私を見つめてる。


そんな風にされたら、
頬が勝手に染まって、

なんなら、耳まで熱くなって、

カップを持つ手も、
少し震えちゃう。


「もう仕事終わってんやろ？
俺も夕方までは空いてるから。
休日出勤のご褒美に、
どっかご飯でも行こか？
何食べたい？」


お昼前には、
丸山先輩が車で迎えに来るって、
言ってた。


・・・言わなきゃ。


「安田社長、あの・・・」

１５→←１３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す