店長がお呼びです。４ (ページ5)

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「もういいよって言ったけど。
今からご飯行くなんて言ってないし、
店長の部屋に行くとも、言ってない。
しばらく会わないか、
キスしないかも、決めてるわけじゃない」

ちょっと困らせてやりたくなった。

だって、大倉店長はずるいもん。

私がもし誰かとキスなんかしたら、
別れようって言いそうなくせに・・・

「えっ？！
さっき、もうええて言うてくれたやん？
許してくれたんちゃうん？」

焦った声なのに、
困り果てたフリしてるだけなの、
バレバレなんだから。

「許したとは言ってないもん。
今日は帰る」

ロッカー室に荷物取りに行こうとして、
歩きかけた私の肩に、
長い腕が回る。

「A、待って」

すぐに、後ろから引き寄せられて。

背中が、店長のおっきな身体にぶつかった。

「俺のためにケーキの練習してくれてんの？」

私を優しく包み込むように抱いて、
耳元に囁くように聞く。

ますますズルい。

「なあ、ごめんて？
機嫌直して？
Aがこの事忘れるまで、
キスはお預けでもええからさ。
久々やもん。
一緒にご飯して、
部屋で映画でも見よ？」

優しい猫なで声してくる。

キスはお預けでもって・・・

そんなの、やだ。

「店長はキスしなくて平気なの？」

振り返って聞く。

「平気なわけないやん。
けどAが怒ってるから・・・」

「怒ってるけど。
キスしてくれなきゃ、
もっと怒る・・・」

矛盾してるのは、自分でも分かってる。

「・・・」

大倉店長、返事してくれないから。

私がすごく恥ずかしい。

「そんな可愛いこと、言うてええん？」

そう呟いたかと思ったら・・・

顎に手をかけられて、
顔だけ、店長の方に、向けられて。

甘くて優しいキスしてくれた。

単純だから、それだけでもう許しちゃった。

「他の人にキスされたらダメ」

そう言って、振り返って、

私から・・・

キスしようとして、
背伸びしたけど、届かなくて。

屈んでくれた店長が、目を閉じてて。

可愛い。

大好き。

ずっとこうしていられたらいいな。