社長がお呼びです。７ (ページ42)

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じっと見つめてたら、
私の念が通じたのか、
電話が鳴った。

「章ちゃん、ホテル着いた？」

「うん。
駅からすぐやったから。
ちょうど観光から帰って来た、
神ちゃんと愛理ちゃんにフロントで会うたわ」

「どこ出かけてたんだろう。
羨ましいなあ。
私も章ちゃんと色々行きたいとこ、
あったのに」

「またいつでも行けるやんか。
Aちゃんの実家があんのに」

「そうだけど・・・
ね、章ちゃん、
不動産屋さんにする返事、
明後日までなんでしょう？
その日に、土地の手付金、払うって言ってたよね？」

「うん、まあ。
けど今回はしょうがないかな。
ちゃんと家族に認めてもらえてから、
家のことは考えたらええやん」

「そしたら、あの土地、売れちゃうかも。
すごく人気のあるとこだって、聞いたし。
私、あの街で家建てて、住みたかったな」

「またええとこ見つけるから。
心配せんとき。
俺はAと一緒なら、
どこで暮らしても楽しいし」

「そんなの、私も一緒だけど・・・
なんなら、
インフィニティアートの社長室でも、
物置でも」

「ぷっ」

私の返事に、章ちゃんが吹き出した。

「Aちゃんは可愛ええなあ」

「社長室に泊まった時、
楽しかったなあって思って」

「あれからそんな時間経ったわけでもないのに、
懐かしいなあ」

「章ちゃん、家は仕方ないけど。
水族館ウェディングの第１号だけは、
キャンセルするの、やだ。
結婚式だけなら、挙げてもいいよね？」

「お母さんにも来てもらいたいやろ？
そういうわけにいかんよ」

「・・・」

「ごめんな・・・」

「なんで章ちゃんが謝るの？
私、２６年生きてきて、
章ちゃんより優しい人に、
出会ったことない」

「大袈裟やなあ」

章ちゃん、笑ってるけど、

章ちゃんは優しさ成分で、
身体が出来てるんじゃないかって、
本気で思ってる。