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「丸山先輩、何か飲みます?」


生チョコを冷蔵庫にしまいながら、
聞いたものの。


私と章ちゃんの、
飲みかけのミネラルウォーター1本しかない。


「すいません。
・・・ここには何もないんで。
私、売店で何か買って来ますね」


「Aちゃん、飲み物なんかええで」


丸山先輩が私の手首を掴んだ時に、
ドアが外側から開いた。


中島さんと章ちゃんが戻って来たの。


焦って丸山先輩の手を振り払うみたいにしてしまった。


章ちゃんが私のこと、
丸山先輩から引き離すように、
自分の後ろに隠す。


さっき、一瞬だけど、
章ちゃんが唇を噛んだの、見えた。

嫉妬した男の顔、してた。


「章ちゃん、入院したって聞いて、
お見舞いに来てんけど・・・
大丈夫なん?」


丸山先輩が、
空気変えるように、
やけに明るい声で聞く。


「ああ、うん。
わざわざごめんな?
大したことないねんて。
明日には退院出来るって、
さっき先生に聞いてきた」


「章ちゃん、
丸山先輩にチョコ頂いたの」


「マル、ありがとうな」


「心配で、顔見に来ただけやねん。
邪魔したらあかんから、
もう帰るわ。
すばる君と大倉も心配してたで」


「二人にも謝っといて。
練習休んでもうて」


「章ちゃんのギターはもう完璧やんか。
俺もこの間に追いついておくわ。
じゃあ行くな。
お邪魔しました」


最後に中島さんに一礼して、
丸山先輩が病室を出て行った。


私の手首を掴んだままの章ちゃんに、
中島さん、


「さっ、検査でお疲れですから。
横になって下さい」


気を取り直すように言って、
反対側の腕を引っ張って、
私から無理に引き離して、
章ちゃんのこと、すとんとベッドに座らせた。


ナースさんたちの食堂での会話を聞いてしまった今となっては、必要以上に距離が近い気がしてくる。

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2018年9月10日 10時

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