社長がお呼びです。７ (ページ16)

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「今も。
真っ赤や」

章ちゃんが鼻の頭、突っついてくる。

それから、
頭の後ろに手が回って・・・

出来た沈黙。

甘い空気の中、
ゆっくりと惹き合う唇。

離れたら、
章ちゃんが照れた目で、
見つめてくれて。

「チョコ味のちゅう。
美味しいな」

そう言って、笑った。

中島さんの動向は気になるところだけど、

章ちゃんに、

疲れちゃうから、
早く帰んなきゃいけないって、
強く強く説得されてしまって、

泣く泣く、病院を後にした。

バスの窓から、
夕焼けのバス停に、
神山くんと愛理ちゃんの姿が見えた。

どうも、別れがたくて、
何本もバスを見送ってたっぽいんだ。

微笑ましい二人だな。

私が降りたバスに、
愛理ちゃんが乗り込んでく。

その背中を神山くんと二人で見送ってる。

愛理ちゃん、角を曲がるまでずっと、
バスの一番後ろの席から、
こっちを振り返って、手を振ってて・・・

なんか、私まできゅんときちゃう。

「A、どこ行っとったん？一人？」

そう言えば、神山くんにまだ報告してなかった。

「社長が入院しちゃったの。
念のため検査するだけだから、
明日には退院出来るって」

「えっ。
仕事で東京出張長引いてたんちゃうん？」

「体調崩して、なかなか帰って来られなかったみたいなんだ」

「そうやってんや。
工藤さんに聞かしてやりたいな」

「工藤さん、勝手にサボってるって、
決めつけてたもんね」

「さっきも駅前で会うてんけど。
また言うてたで」

「困った人だなあ」

「ほんまやで」

隣で自転車押して歩き出した神山くんの横顔が、
少し前と違って見える。

自信が滲んでる、っていうか・・・

「社長と仲直りしたん？
喧嘩しとってんやろ？」

「うん、まあ。
仲直りしたよ？
神山くんもすっごく幸せそうだね」